抄録
緑熟段階で収穫されたトマト果実を20°, 30°および35°Cで貯蔵し, 各温度区に変温処理を行った.
1.20°→30°Cおよび20°→35°C区は20°C一定のものに比較して赤色の鮮やかさが劣り, また, フィトエンおよびリコピン含量が低かったが, 20°→30°Cでは一時的にカロチン類の増大がみられた. 逆に, 30°→20°Cおよび35°→20°Cでは変温後, 着色が顕著に進行し, 20°C区と同様に赤くなった.
2.リコピンの前駆体であるフィトエン, フィトフルエンおよびζ-カロチンのカロチン類中に占める割合は20。C貯蔵で最も大きかった剤30°→20°Cおよび35°→20°C処理区では, 20°C貯蔵区に比べてそれらの前駆体の割合は低く, リコピンの割合は高かった.
3.β-カロチンは30°Cで含量およびその異性体含有率とも高くなったが, 20°→30°Cに変温後の含量の増加は認められなかった.
4.α-トコフェロールは30°および35°Cで含量が高くなり, 20°Cではほとんど増加しなかったが, 30。→20°Cおよび35°→20°C処理区では含量の増大がみられた.
以上より, リコピン, β-カロチンおよびα-トコフェロールの生合成経路はそれぞれ温度に対する反応が異なり, それらの経路に及ぼす高温ならびに変温処理の影響は, 共通の前駆物質の各経路への流れを変化させるものであると推察した.