園芸学会雑誌
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モモ果実の発育と生理的落果との関係
久保田 尚浩日笠 恵美子
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1995 年 64 巻 1 号 p. 1-8

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抄録
モモ'清水白桃'と'瀬戸内白桃'の成木を3個体ずつ供試し (No. 1,2,3), 果実発育の面から生理的落果,とくに果実発育第2期の末期から第3期の初期に発生する後期落果について検討した. なお, No. 3の個体はいずれの品種とも例年落果しやすい樹である. 落果率は, '瀬戸内白桃'のNo. 3の個体が36.3%と著しく高く, これ以外では5%未満であった, 高い落果率を示した'瀬戸内白桃'のNo. 3の個体では他の個体に比べて, 果実, 核および種子の生長が第1期に大きく,第2期に小さかった. また, この個体では採取果実の核割れ果率や種子の退化率が高く, 種子の退化も早期に始まった. しかし, 生理的落果の少なかった'清水白桃'でも高い核割れ果率や種子の退化率を示し, これらのことと落果との関係は明確でなかった. 双胚果率と落果率との間には関係が認められなかった. '瀬戸内白桃'のNo. 3の個体では, 果実発育第2期のエチレン生成量が他の個体よりも多かったが, 落果との関係は明らかでなかった. '瀬戸内白桃'における葉,果肉および種子の全炭素含量には個体間に全く差がなかったが, 落果率の高かったNo. 3の個体では種子と葉の全窒素含量が果実発育第2期以降に少なく, とくに種子の窒素含量が第2期初期に急減し, その後も収穫時まで減少し続けた.
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