園芸学会雑誌
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湿度環境がバナナ果実の追熟および肉質に及ぼす影響
薛 彦斌久保 康隆稲葉 昭次中村 怜之輔
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1995 年 64 巻 3 号 p. 657-664

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抄録
湿度環境に対するバナナ果実の生理的反応, 特に肉質に及ぼす影響について, 'Cavendish'種バナナを用いて調べた.
1.水分損失は追熟に伴う生理的変化に対して顕著な影響があり, 低湿条件 (RH64.7±2.4%) で呼吸のクライマクテリック発現に達する期間が高湿条件(RH97.8±0.3%) に比べて約30%短縮され, エチレン生成を開始して成熟を始めるまでの日数がほぼ12日早くなった.
2.低湿条件で果皮色の黄変が促進され, またハンター表色系a*値, b*値の変化がエチレン生成より先行してみられた.
3.高湿区での果肉硬度の低下は緩慢であったが,低湿区では急速に軟化し, 約25Nの同一硬度値に達する日数は高•低湿両区ではそれぞれ24日目と15日目であり, 約9日間の差がみられた. このことは, 低湿区でWSPの増加とHPの減少が大きく, 関連分解酵素活性の増大も早かったことと一致した.
4.高•低湿区とも, PG活性はエチレン生成よりそれぞれ6日および9日早く検出され, 果肉の軟化はエチレンの関与なしに誘導される可能性が示唆された.
5.セルラーゼ活性とバナナ果肉軟化との関連は明らかでなかった.
以上の結果から, バナナ果実に対して湿度環境は水分損失という第一次の反応を通じて, 二次的に種々の生理的反応を誘導すること, 特に果皮の黄変や軟化を促進する作用のあることが示された.
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