抄録
ホウレンソウ葉肉由来プロトプラストからのより効率的な植物体再生システムを培地中の有機物や生長調節物質などの組み合わせを検討することで確立した.
プロトプラストの分裂率はKM8pビタミン,1.0mg•liter-1 BA,1.0 mg•liter-1 2, 4-Dおよび0.5%グルコースを含む1/2MS培地で最も高く,浸透圧調節剤としてマニトールよりグルコースを培地に加えた方が分裂は著しく旺盛であった.また,炭素源としてスクロースよりグルコースを加えた方が分裂率が高かった.KM8pの有機酸を培地に添加すると,浸透圧調節剤がマニトールの場合には分裂が阻害されたが,グルコースであると反対にやや促進された.プロトプラスト由来コロニーをKM8pビタミン,1.0 mg•liter-1 GA3,および濃度の異なる種々のオーキシンを含むMS固体培地に移植したところ,1.0-10.0 mg•liter-1 IAAあるいは1.0-5.0 mg•liter-11BAを含む培地で多くのカルスが形成された.さらに形成されたカルスを生長調節物質を含まないMS固体培地へ移植すると,1.0-10.0mg•lite-1 IAAあるいはIBAを含むカルス形成培地で培養されたカルスでシュート形成が観察された.それらのシュートを0.5mg•liter 11BA,2%スクロースおよび0.8%寒天を含むMS培地(pH 6.3)に移植すると多くのシュートから不定根が分化し,生長した.再分化した植物体を順化後,温室で育成したところ,それらの幾つかが開花し,正常な種子を生産した.
本研究で確立されたホウレンソウのプロトプラスト培養システムは,細胞融合や遺伝子導入など新しい技術を利用して育種を行う場合に有効であると考えられる.