抄録
土-根境界の水ポテンシャル(Ψs・r)は土と根の境界層の水分状態を示し, 水ストレスの最適指標として提唱されているが, 直接的な測定は簡単にできない.著者らは, オーム法則のアナログを用いΨs・rを求め, 異なる人工培地に生長するチェリープラムのΨs・rおよび植物体木部水ポテンシャル(ΨX)と蒸散速度(EA)が土壌の脱水と再吸水に対する反応を調べた.これらの人工培地は, 堆肥化した樹皮, ピートと砂(培地-1);ピート, 樹皮, 砂と堆肥(培地-2);およびピート, 鋸屑と砂(培地-3)からつくった.土壌を脱水させて, マトリックポテンシャル(Ψm)が低下した時, 培地-2で生長する植物は, より高いΨs・rおよび高いΨXを保った.しかし, 脱水した土壌をまた再吸水させる時, 同じΨmでもΨs・rは常に土壌が脱水する時のものに比べ低かった.ΨmとΨs・rの間には強い"履歴現象"と言われる反応が起こった.履歴現象は培地-2で一番大きく, 培地-3で一番小さかった.ΨXとEAにおいてはΨs・rの場合と似た履歴現象が起こった.Ψs・rが土壌の脱水に対する反応と土壌再吸水に対する履歴現象は, その培地の水伝導度にかかわることが考えられた.