抄録
ウンシュウミカン果実の脱緑に及ぼすエチレンの作用機構を明らかにするため, タンパク質合成阻害剤の影響を調査し, また, 可溶性クロロフィラーゼ(クロロフィルaをクロロフィリドaに加水分解する酵素)を精製した.クロロフィラーゼはクロロフィル分解過程の最初のステップを触媒する.エチレン処理は, 暗所下でのウンシュウミカン果実の脱緑を促進し, 可溶性クロロフィラーゼ活性を増大させた.シクロヘキシミド(細胞質でのタンパク質合成阻害剤)はエチレン作用を阻害した.クロラムフェニコール(プラスチドタンパク質合成阻害剤)も弱く可溶性クロロフィラーゼ活性を阻害した.これらの結果は, エチレンが可溶性クロロフィラーゼ酵素の合成を誘導することにより果皮の脱緑を促進することを示唆した.さらに, エチレン処理ウンシュウミカン果皮での可溶性クロロフィラーゼ活性の制御過程には, 細胞質基質でのde novoタンパク質合成とクロロプラスト依存のタンパク質合成が重要であることが示唆された.可溶性クロロフィラーゼは, エチレン処理したウンシュウミカン果皮のアセトンパウダーより, ハイドロフォービッククロマトグラフィーで, 収率45.5%, 203.5倍まで精製した.