抄録
ウンシュウミカン果実でのクロロフィル代謝のタイプI(フィトールの脱離, マグネシウムの脱離, クロロフィルのイソサイクリック環の側鎖の修飾)反応に対するエチレン作用のメカニズムが, タンパク質合成阻害剤を使用し調査された.エチレン処理は, 暗黒条件下のウンシュウミカン果皮の脱緑を促進し, クロロフィラーゼ活性を増加した.シクロヘキシミド(細胞質でのタンパク質合成阻害剤)はエチレンが促進する脱緑を阻害したが, クロラムフェニコール(プラスチドタンパク質合成阻害剤)は阻害しなかった.一方, エチレン処理はクロロフィリッドを分解する酵素(CDE)活性とC132-カルボキシル-ピロフェオフォルビドを生成する酵素(CPFE)活性を増加しなかった.エチレン処理したウンシュウミカン果実でのCDE活性とCPFE活性は, シクロヘキシミドとクロラムフェニコール処理によってわずかに増加した.ウンシュウミカンの果皮色とクロロフィラーゼ活性との間には, 高い正の相関が得られた : Y=1.368X-16.038(r=0.992)(ただしXは果皮色, Yはクロロフィラーゼ活性).しかしながら, ウンシュウミカンの果皮色と1)CDE活性(Y=0.024X-98.030(r=0.460), 2)CPFE活性(Y=0.015X-103.581(r=0.424)との相関は低かった.これらの結果は, エチレンがクロロフィラーゼを誘導することにより果皮の脱緑を促進することを示唆し, クロロフィラーゼが脱緑過程での鍵酵素であることを暗示した.