園芸学会雑誌
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68 巻, 4 号
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  • 樋口 浩和, 宇都宮 直樹
    1999 年 68 巻 4 号 p. 707-716
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    高温によるチェリモヤの開花抑制を明らかにするため, 昼/夜温がそれぞれ20/15℃・30/25℃に制御されたガラス温室内において2年間にわたり開花数・花器の形態形成・着花節位・開花までの日数・開花期間に関する調査をした.花芽の分化は20/15℃でより促進され, 30/25℃に比べて多くの花が長期間開花した.花は20/15℃でより大きく生長したが, 出蕾から開花までの期間は30/25℃の方が短かった.こうした温度の影響は温度処理2年目の方がより顕著に現れた.チェリモヤでは, 節位の違いによって花芽の発達が異なり, 温度に対する反応も異なった.新梢先端部(4節目より先)では30/25℃で2年間全く開花が見られなかった.一方, 新梢基部(1から3節目)での開花は, 1年目には30/25℃と20/15℃でほぼ同数, 2年目には30/25℃の方が20/15℃より少なくなった.新梢先端部に着生する花芽は新梢の伸長とともに分化し, 出蕾から約5週間後に開花した.新梢基部に着生する花芽は開花のほぼ1年前の, 葉齢1週目の葉腋にすでに分化していた.チェリモヤは, 翌年の開花と新梢生長のための花芽と葉芽の複合腋芽を形成することが観察された.葉齢4週の葉腋に見られた一複合芽当たりの花芽の数は20/15℃では2-3で葉芽の数は1-2であったが, 30/25℃では逆に葉芽が3-5で花芽が0-1であった.花芽分化期は温度条件が開花と花の形態形成にもっとも大きな影響を及ぼす時期であることから, 新梢基部の花芽には開花の前年の, 新梢先端部の花芽には新梢伸長中の高温が開花を抑制することが示唆された.
  • 克熱木 伊力, 新居 直祐, 山口 勝司, 西村 幹夫
    1999 年 68 巻 4 号 p. 717-723
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    本報告では, 500ml容のポットに定植したモモの1年生実生樹を用いて, 窒素施肥量の相違が地上部と地下部の生長に及ぼす影響を調査するとともに葉と根の炭水化物含量を測定した.さらに葉の葉緑体に焦点を絞って, デンプン蓄積とRuBisCOタンパク量の変化を検討した.窒素施肥量は, 1樹当たりNH4NO3を0 mg(N-0区), 75 mg(N-75区), 150 mg(N-150区), 300 mg(N-300区), 600 mg(N-600区), 900 mg(N-900区)施肥し, その他の肥料は各処理区とも同量とした.なお, N-900区は実験期間中枯死した.茎と葉の重量, 枝長からみた地上部の生長は, N-150区とN-300区で最も大きかった.根はN-75区とN-150区で重かった.地上部と地下部ともにN-0区とN-600区で小さかった.葉と根の窒素含量(対乾物重%)ならびに葉面積当たりのクロロフィル含量(μg・cm-2)は窒素施肥量の増加に伴い高くなった.葉の全糖含量(対乾物重%)も窒素施肥量の増加に伴い高くなった.ソルビトール含量(対新鮮重%)は樹の生長が旺盛な処理区ほど高かった.葉内デンプン含量は窒素の施肥量とは逆の傾向がみられた, 4', 6-diamidino-2-phenylindole染色によってクロロフィルが濃い赤色に励起された.N-0区でのクロロフィルの励起は弱く, デンプン蓄積と関連して葉緑体の周辺部に集中していた.Ribulose bisphosphate carboxylase-oxygenase (RuBisCO)は窒素施肥量に対応して増加したが, N-300区とN-600区の間には差がみられなかった.根の全糖含量は樹の生長が旺盛な処理区ほど高く, 根のデンプン含量は根の生長量とは逆の傾向がみられ, N-0区とN-600区で高かった.
  • / 弦間 洋, 岩堀 修一, Shuichi Iwahori
    1999 年 68 巻 4 号 p. 724-733
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ユスラウメ(Prunus tomentosa)台モモ樹(矮性台樹)の接木部のフェノール物質含量とその組織内分布について高速液体クロマトグラフ(HPLC)および組織化学的手法で調査し, 共台樹と比較した.DMACA (p-dimethylamino cinnamaldehyde)染色の結果, 矮性台樹の接木部のカルス, 新生木部および皮層組織に接木後6ヶ月の間フェノール物質が局在して蓄積することが示された.このフェノール物質は穂木台木間の接着を遅らせるものと思われた.HPLC分析により, 穂木接着に関係すると思われる4つのフェノール物質が検出された.1つのピークを除きカテキン, プルニン, ナリンゲニンと推定された.このうち2成分は矮性台樹の台木部師部では検出されなかった.共台樹では師部フェノール含量が矮性台樹に比べて多く, とくにプルニン(ピーク#1成分)およびナリンゲニン(#3)で著しいことが認められた.また矮性台樹では木部フェノール含量も少なく, とくに台木部で微量もしくは検出されない成分があった.次いで接木部, 穂木部の順にフェノール含量が多く, 共台樹のパターンと異なっていた.すなわち, プルニン(#1)と未同定の#2成分が接木部より上部の師部に蓄積するが, 木部においてはプルニン(#1)成分およびナリンゲニン(#3)成分が共台樹に比べ少ないことが判明した.低分子フラボノールであるカテキンは, とくに矮性台樹の接木部木部組織で多かった.師部のカテキン含量は矮性台樹よりも共台樹の接木部でその含量が多かった.
  • 金好 純子, 小林 省藏
    1999 年 68 巻 4 号 p. 734-738
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    アグロバクテリウム法によりCaMV35Sプロモーター, またはrolC (OFR12)遺伝子自身のプロモーター調節下にあるrolC遺伝子をカラタチに導入し, 形質転換体が得られた.導入遺伝子の確認は, PCRおよびサザンブロット分析により行った.形質転換体はわい化したが, そのわい化の程度は個体によりあるいはプロモーターにより異なっていた.形質転換体の節間長は, CaMV35Sプロモーターでは非常に短く, 20個体のうち18個体が非形質転換体の40%以下であった.一方, rolCプロモーターの形質転換体の節間長のわい化度は幅広く, 非形質転換体の10-120%であった.挿し木試験を行った形質転換体6個体のうち5個体が非形質転換体よりも発根率が高かった.
  • 克熱木 伊力, 新居 直祐
    1999 年 68 巻 4 号 p. 739-745
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    鉢植えのモモ樹を用いて, 果実成熟期における果実収穫前後の葉内炭水化物含量, とくにソルビトールとデンプン含量の日変化に及ぼす着果の影響を調査した.果実収穫前では, 生体重当たりの葉内ソルビトール含量は昼間増加し, 夜間減少した.果実収穫当日の昼間における増加程度は, 果実収穫前と比べて高かった.これに対して, 夜間におけるソルビトール含量の低下は, 果実収穫前後で有意な差はなかった.果実収穫前の乾物重当たり葉内デンプン含量の日変化もソルビトールと同様な傾向がみられた.果実収穫当日の昼間におけるデンプンの増加量は果実収穫前と比べて有意な差はみられなかったが, 夜間における低下の程度は明らかに小さかった.
  • / , / 橋永 文男, Tirtha R. Bajgai, Fumio Hashinaga
    1999 年 68 巻 4 号 p. 746-752
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    世界の塩類集積土壌においてダイズを栽培するときは植物と栄養素の相互関係を理解する必要がある.温室でホーグランド液を使用して栽培した植物(25 cmの高さ)に対して塩化ナトリウム濃度を0から120 mMまで増加させ, リンとナトリウムの取り込みを調査した.リンの吸収は栄養培地中の無機リン濃度に依存した.8 mMのリンの添加はすべての植物部位でリンの取り込みを有意に促進した.多項式回帰モデルでは葉中の塩類濃度の増加とナトリウム活性とに相関があった.一方, 茎に対しては二次の関係式が優れていた.塩濃度の増加に対する32Pの取り込みは根に対しては正の傾きの直線であり, 茎に対しては負の傾きになった.シュートと根の乾物重は塩類の増加につれて減少した.葉のクロロフィル含量は塩濃度が低いときには増加したが, 高濃度では減少した.従って, ダイズの塩類ストレス改善のためには無機リンの施用が勧められる.
  • 松永 啓, 門馬 信二
    1999 年 68 巻 4 号 p. 753-761
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ピーマン(Capsicum annuum L.の甘味種)の青枯病抵抗性素材を見いだすために, ピーマン74品種, トウガラシ59品種およびトウガラシ属近緑種63品種の抵抗性検定を行った.各植物体を青枯病汚染圃場に定植し, 青枯病原細菌懸濁液を灌注接種し, 0(無病徴)∿4(枯死)の5段階の発病評点で抵抗性を評価した.また, 発病評点が1以下の品種については幼苗接種によって青枯病抵抗性を検定した.ピーマン, トウガラシおよびトウガラシ近緑種それぞれに強度の抵抗性品種が認められ, ピーマンでは実用F1品種にまで抵抗性のものが認められた.従って, ピーマンの青枯病汚染地帯では本試験で明らかとなった抵抗性品種を利用することにより青枯病を防除することが可能である.ピーマン型の抵抗性15品種のうち14品種は育成過程で'三重みどり'または'三重みどり'を親として用いた品種が使用されていることから, これら品種の抵抗性は'三重みどり'に由来する可能性が高いと考えられた.ピーマンおよびトウガラシでは, 中程度以上の抵抗性を示した品種のすべてが日本, 中国, バングラディシュなど東アジア地域の育成種または在来種であり, 米国, メキシコなど他の地域からの品種に抵抗性のものは認められなかった.
  • 後藤 隆子, 宮崎 正則, 奥 正和
    1999 年 68 巻 4 号 p. 762-767
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ピルビン酸ナトリウム, クエン酸, リンゴ酸, フマル酸, コハク酸, マレイン酸, マロン酸, およびそれらを組み合わせて添加した1/2MS培地(KM8pビタミン, 1.0 mg・liter-1BAおよび1.0 mg・liter-1 2, 4-D)でホウレンソウ葉肉由来プロトプラストを培養した.浸透圧調節剤として0.5Mマンニトールを用いた培地に有機酸を加えるとプロトプラストの分裂が強く阻害された.しかし, 浸透圧調節剤が0.5Mグルコースであると, マロン酸を除いて有機酸はプロトプラストの分裂を促進した.特に, グルコースとクエン酸を組み合わせた培地におけるプロトプラスト分裂率は最も高く, 多くのマイクロカルスが形成された.また, この培地で培養されたプロトプラスト由来カルスからの再分化率も高かった.プロトプラストの分裂はクエン酸濃度が0.1mMで最も高く, それ以上になると著しく低下した.このようなクエン酸の効果は材料の齢や培養密度が異なっても認められ, 播種後25日までの材料であれば, クエン酸はプロトプラストの分裂を促進し, 高い分裂率を得ることができた.また, 3.0から20×104プロトプラスト・m1-1の培養密度でも, クエン酸添加によって分裂率が高くなり, 低い培養密度でその傾向が顕著に現れた.これらの結果から, 培地ヘクエン酸を添加することによって, プロトプラストの分裂が促進されることが明らかになった.
  • 馬 有会, 加藤 鎌司, 桝田 正治
    1999 年 68 巻 4 号 p. 768-773
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    雄性不稔3系統Fms-1, Fms-2, Fms-3, およびオリジナルのトマト'ファースト'を用い, 葯からのカルス誘導およびシュート再生条件について検討した.カルス形成能は顕著に雄性不稔遺伝子に影響され, 小胞子発育が減数分裂初期に崩壊しはじめるFms-2系統がもっとも効率的で, 花粉崩壊の発育段階が小胞子期であるFms-1と, 四分子期に小胞子の発育が停止したFms-3はカルス形成能が劣った.Fms-2は小胞子発育停止直後に花蕾(長さ5 mm)を4℃で3日間低温処理し, IAA 5.0 mg・liter-1とzeation 2.5 mg・liter-1の添加されたMS培地に花蕾から葯を取り出して置床し, 16時間照明で培養するとカルスの誘導が最も優れた.カルスをkinetin 0.2 mg・liter-1の添加されたMS培地に移したところ, シュートの再生が効率的に行われた.
  • 一色 司郎, 大塚 健一朗, 田代 洋丞, 宮崎 貞巳
    1999 年 68 巻 4 号 p. 774-779
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    サトイモ[Colocasia esculenta (L.) Schott]の三倍体(2n=42)の起源を探るために, バングラデシュ産の野生サトイモの二倍体(2n=28)系統を用いて人工交配を行い, 得られた実生の倍数性を調査した.その結果, 調査した実生のほとんどが二倍体であったが, 交雑実生1041個体の中に6個体および自殖実生354個体の中に2個体それぞれ三倍体が認められた.これらのことから, サトイモの三倍体が二倍体の交雑実生および自殖実生の両方に起源することが示唆された.次に, 交雑実生の中で認められた6個体の三倍体についてアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの遺伝子座Aat-1のアイソザイム分析を行った.その結果, 6個体の三倍体のうち, 5個体は種子親および残りの1個体は花粉親がそれぞれ二組のゲノムの提供親であったことが明らかとなった.従って, サトイモの三倍体が生じる際, 種子親および花粉親のいずれもが二組のゲノムを提供しうることが示唆された.
  • 沈 文雲, 名田 和義, 橘 昌司
    1999 年 68 巻 4 号 p. 780-787
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    低温耐性の異なるキュウリ品種間で, 低温遭遇中およびその後の葉の酸素ラジカル生成活性を比較した.'津春三号', 'シャープI', '四葉'の第1葉齢時の幼植物を暗黒下で3℃または15℃に24時間遭わせたあと, 明/暗期の気温28/22℃, 12時間日長の人工気象室に移すと, 低温遭遇区の葉の周辺部と中央部にネクロシス状の障害が現われ, それは時間とともに拡大した.3品種の低温障害程度(常温に戻して24時間後の葉の障害面積率と, 引き続きガラス室で7日間栽培後の茎葉の生長抑制程度)は'四葉'が最も大きく, 次いで'シャープI', '津春三号'の順であった.また, 脂質過酸化の指標となるマロンジアルデヒド含量は低温遭遇中には増加しなかったが, 常温に戻すと次第に増加した.常温に戻して24時間後の3品種の葉のマロンジアルデヒド含量の増加程度は低温障害程度とほぼ一致した.'四葉'の葉では, 低温遭遇中にNADPH依存性スーパーオキシドと過酸化水素の生成活性が著しく高まった.常温に戻すと過酸化水素生成活性が低下し, ヒドロキシルラジカル生成活性が顕著に高まった.スーパーオキシド生成活性は低温遭遇24時間目に急速に低下したが, 常温に戻した後に再び増大した.'シャープI'では, 常温に戻した後の前半に過酸化水素とヒドロキシルラジカルの生成活性が増大し, 後半にNADPH依存性スーパーオキシド生成活性が増大した.これに対して, '津春三号'では, 低温遭遇葉のNADPH依存性スーパーオキシド生成活性とほぼ比例して変動した.以上の結果から, 酸素ラジカル生成活性の高まりによる膜脂質過酸化の促進がキュウリ葉の低温障害の主要な要因であると考えられる.また, 低温による酸素ラジカル生成活性の高まりにはNADPHオキシダーゼの活性化が関与しており, その活性化程度がキュウリ品種の低温耐性に密接に関係していると推察される.
  • 山下 謙一郎, 有田 寛貴, 田代 洋丞
    1999 年 68 巻 4 号 p. 788-797
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ネギ属Cepa節野生種Allium galanthum Kar. et Kir.の細胞質を利用したネギ(A. fistulosum L.)の雄性不稔系統を育成するため, A.galanthumを細胞質提供親とした連続戻交雑により, ネギの細胞質置換を行った.連続戻交雑の過程において, B1以降は種子稔性が高い方向に, さらに, B2以降は花粉稔性が低い方向と高い方向に選抜を行い, 作出したF1, B1, B2, B3, B4およびB5について, 花粉稔性および種子稔性の調査を行った.花粉稔性は, F1では65%であった.B1では10から77%, B2では0から98%の範囲でそれぞれ分離した.花粉稔性が低い方向に選抜を行ったB3, B4およびB5のほとんどの個体が, 花粉不稔性を示した.F1での稔性の低下は核の雑種性によると考えられたが, 戻交雑が進んだ世代において出現した花粉不稔は, 核ゲノムの雑種性によるものではなく, A.galanthumの細胞質とネギの核との不和合によって引き起こされると考えられた.花粉稔性が高い方向に選抜を行ったB3, B4およびB5のいずれでも花粉可稔個体と花粉不稔個体とが約1 : 1の比で分離した.このことから, 花粉可稔個体はA.galanthumの核ゲノムに由来する単一の優性稔性回復遺伝子を有していることが強く示唆された.葉緑体およびミトコンドリアDNAの分析結果から, 戻交雑後代がA.galanthumの細胞質を受け継いでいることが証明された.本研究の結果から, A.galanthumの細胞質はネギの雄性不稔系統の開発に有効であることが明らかとなった.
  • 山根 健治, 河鰭 実之, 藤重 宣昭
    1999 年 68 巻 4 号 p. 798-802
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    フリーラジカル捕捉剤である安息香酸ナトリウムおよび没食子酸n-プロピル処理により, 切り離されたグラジオラス小花における花被のしおれの開始がわずかに遅れた.花被のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性は花被の完全展開後2日間で著しく低下し, その後, 花被のしおれが開始した.300μMシクロヘキシミド(CHI)処理により花被のSOD活性の低下は緩和され, しおれは抑制された.花被のしおれが開始したとき, カタラーゼ(CAT)の比活性はほぼ一定であり, 花被当たりのCAT活性は低下した.CHI処理によってCAT活性はわずかに低下した.花被のペルオキシダーゼ(POD)活性は完全展開1日後から著しく上昇した.この上昇はCHI処理によりほぼ完全に抑制された.これらの結果から, フリーラジカル, SOD活性の低下およびPOD活性の上昇はグラジオラス花被の老化過程に関与することが示唆された.
  • 工藤 暢宏, 新美 芳二
    1999 年 68 巻 4 号 p. 803-809
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    前報でセイヨウアジサイ[Hydrangea macrophylla f. hortensia (Lam.) Rehd.]とアメリカノリノキ(H. arborescens L.)の種間交雑において, 交配後の胚珠培養で得られた実生が発芽直後あるいは幼苗期に枯死することを報告した.本研究では, 雑種致死を回避し健全な雑種植物を得るため胚珠培養由来胚の子葉片を培養する方法を検討した.セイヨウアジサイ2品種を種子親, アメリカノリノキ1品種を花粉親にした種間交雑で胚珠培養により得た実生の子葉片を植物ホルモン添加培地で培養し, カルスを誘導した.'ブルースカイ'を種子親にした場合, シュートを分化する15のカルス系統を選抜したが, 鉢上げ後ガラス温室で順調に生育したのは1系統のみであった.再分化幼植物の雑種性を検定した結果, 形態は両親のほぼ中間を示し, 染色体数は, 種子親の'ブルースカイ'は2n=52本, 花粉親の'アナベル'は2n=38本であったのに対し, 再分化植物のそれは2n=42本で異数性を示した.さらにRAPDのバンドパターンは両親のバンドを併せもった.以上から再分化植物の雑種性は高いと判断された.
  • 河野 智謙, 足立 勝, 倉田 裕文, 東 理恵, 下川 敬之
    1999 年 68 巻 4 号 p. 810-816
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    トマト果実より調製した粗酵素抽出中にフェオフォルビドα(クロロフィルαの代謝産物)分解酵素の活性が認められた.フェオフォルビドa分解活性は, カルシウム(10mM)の添加で顕著に促進した.分解活性はEGTAにより低く抑制され, CaCl2による酵素の活性化は起こらなかった.カルモジュリンの阻害剤であるトリフルオペラジン(trifluoperazine, 1mM)は, 分解活性とCaCl2による酵素の活性化を阻害した.ATP (5mM)はCaCl2と同様に分解活性を強く促進した.ATPとCaCl2の分解活性に対する効果は相加効果ではなかった.CaCl2による酵素の活性化はプロテインキナーゼの阻害剤(H-7, KN 62)により完全に阻害された.ATPとCaCl2の分解活性に対する効果は, ATPがリン酸ドナーとして利用されるようにカルシウムで活性化するプロテインキナーゼを促進すると結論づけた.またその過程にはカルモジュリンの関与が推定された.さらに, フェオフォルビドα分解酵素は2, 2'-bipyridylやサリチル酸により不活性化された.フェオフォルビドa分解の反応生成物は, 高速スキャン蛍光分光三次元スペクトル法により, 蛍光物質として同定され, Tom-FCCs(トマト蛍光クロロフィル代謝産物)として表わした.Tom-FCCsは(Ex/Em : 300/355, 435nm)に強い蛍光強度を示した.Tom-FCCsの生成はCaCl2により促進した.この結果は, 植物のクロロフィル分解過程の最終ステップがカルシウムとプロテインキナーゼにより制御されていることを明らかにしたものである.
  • 倉田 裕文, 足立 勝, 伊藤 猛, 東 理恵, 下川 敬之
    1999 年 68 巻 4 号 p. 817-824
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    エチレン処理したウンシュウミカン果実の粗酵素液によるクロロフィル代謝が, 逆相高速液体クロマトグラフィーにより調査された.今回の反応条件で, 新しいクロロフィル代謝産物, C132-カルボキシル-ピロフェオフォルビドα, クロロフィリッドαおよびピロフェオフォルビドαが, クロロフィルαの代謝産物として検出された.新しいクロロフィル代謝産物はクロロフィルαとクロロフィリッドαを粗抽出液と反応させたときに生成され, フェオフォルビドα, ピロフェオフォルビドαおよびフェオフィチンαでは生成されなかった.逆相高速液体クロマトグラフィーの分析結果は, この新しいクロロフィル代謝産物がMg-C132-カルボキシル-ピロフェオフォルビドαであることを示した.同様に無処理果実の粗酵素液でもMg-C132-カルボキシル-ピロフェオフォルビドαが生成された.これらの結果は, クロロフィリッドαからピロフェオフォルビドαの新しい経路が, ウンシュウミカン果実のクロロフィルαの代謝に関与していることを示唆した.
  • 倉田 裕文, 伊藤 猛, 足立 勝, 下川 敬之
    1999 年 68 巻 4 号 p. 825-829
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン果実でのクロロフィル代謝のタイプI(フィトールの脱離, マグネシウムの脱離, クロロフィルのイソサイクリック環の側鎖の修飾)反応に対するエチレン作用のメカニズムが, タンパク質合成阻害剤を使用し調査された.エチレン処理は, 暗黒条件下のウンシュウミカン果皮の脱緑を促進し, クロロフィラーゼ活性を増加した.シクロヘキシミド(細胞質でのタンパク質合成阻害剤)はエチレンが促進する脱緑を阻害したが, クロラムフェニコール(プラスチドタンパク質合成阻害剤)は阻害しなかった.一方, エチレン処理はクロロフィリッドを分解する酵素(CDE)活性とC132-カルボキシル-ピロフェオフォルビドを生成する酵素(CPFE)活性を増加しなかった.エチレン処理したウンシュウミカン果実でのCDE活性とCPFE活性は, シクロヘキシミドとクロラムフェニコール処理によってわずかに増加した.ウンシュウミカンの果皮色とクロロフィラーゼ活性との間には, 高い正の相関が得られた : Y=1.368X-16.038(r=0.992)(ただしXは果皮色, Yはクロロフィラーゼ活性).しかしながら, ウンシュウミカンの果皮色と1)CDE活性(Y=0.024X-98.030(r=0.460), 2)CPFE活性(Y=0.015X-103.581(r=0.424)との相関は低かった.これらの結果は, エチレンがクロロフィラーゼを誘導することにより果皮の脱緑を促進することを示唆し, クロロフィラーゼが脱緑過程での鍵酵素であることを暗示した.
  • 塩見 慎次郎, 中本 純一, 山本 幹博, 久保 康隆, 中村 怜之輔, 稲葉 昭次
    1999 年 68 巻 4 号 p. 830-832
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キュウリの未熟果(開花後10日収穫)と成熟果(開花後35日収穫)を用いて, エチレン生合成活性と1-アミノシクロプロパン1カルボン酸(ACC)合成酵素(ACS)およびACC酸化酵素(ACO)遺伝子の発現を調べた.開花後35日収穫果のACS活性は, 貯蔵中およびエチレン処理によって増加せず, 低いレベルを維持したままで, 成熟果からのエチレン生成はほとんど誘導されなかった.ACO活性はエチレン処理によって著しく増加した.ノーザンブロット分析を行った結果, メロン果実の追熟に伴って発現するCMe-ACS1と非常に高い相同性をもつキュウリのACS遺伝子であるCS-ACS1のmRNAは, 成熟果のいずれの組織でも蓄積しなかった.エチレン処理によってもCS-ACS1の転写は誘導されなかった.CS-ACS2の転写産物は果皮と果肉で検出され, エチレン処理によって減少した.CS-ACO1の発現はエチレン処理によって強く促進されたが, CS-ACO2はエチレン処理に関係なくほぼ一定の発現を示した.以上の結果から, キュウリがノンクライマックテリック型果実に属することが確認され, そのことは, CS-ACS1の発現が成熟またはエチレン処理によって誘導されないことに起因すると考えられた.
  • 胡 建芳, 福田 勉, 小原 均, 高橋 英吉, 松井 弘之
    1999 年 68 巻 4 号 p. 833-838
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    AVG(2-aminoethoxyvinylglycine)の開花前花穂処理がフドウ'巨峰'の結実性に及ぼす影響について, 1994∿1997年の4年間にわたって処理濃度, 処理時期, 着粒率, 有核果粒率, 果粒の品質, 胚珠数, 小花中のACC含量, エチレン発生量および雌ずい中の花粉管伸長阻害物質活性の面から調査した.25, 50, 75, 100, 300ppmAVGの花穂処理を1∿3週間前に行った結果, 50∿300 ppmAVG処理で着粒率および有核果粒率が増加した.ただし, 開花期までの日数が長いほど高濃度処理が, 開花期までの日数が短いほど低濃度処理が有効であることが明らかとなった.なお, AVG処理は果粒重をやや増加させる傾向がみられたが, 糖度や酸度には影響しなかった.AVG処理は小花中のACC含量を低下させ, エチレン発生量を抑制した.さらに, AVG処理は雌ずい中の花粉管伸長阻害物質活性を低下させるとともに心皮当たりの胚珠数を増加させ, 果粒当たりの種子数も増加させた.
  • 胡 建芳, 小原 均, 高橋 英吉, 松井 弘之
    1999 年 68 巻 4 号 p. 839-846
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ブドウ'巨峰'の一番枝花穂と二番枝花穂を用い, 両者間の結実性の違いを小花の形態や内生植物ホルモン活性および雌ずい内の花粉管伸長と花粉管伸長阻害活性の面から比較調査した.二番枝花穂の小花の雌ずいの大きさは一番枝花穂のそれに比較して小さく, この差は子房壁の細胞層数の違いによっていた.しかし, 胚珠の大きさは両者間に差異が認められなかった.花粉粒の大きさも二番枝花穂の小花の方が小さかったものの人工培地上での花粉の発芽率は高かった.しかし, アセトカーミンによる花粉粒の染色率は両者ほぼ同じ値であった.二番枝花穂の着粒率は一番枝花穂のそれより著しく高かった.さらに, 有核果粒率も二番枝花穂の方が明らかに優れ, 2種子以上の果粒の割合が著しく高かった.一番枝花穂と二番枝花穂の小花中の植物ホルモン活性を比較すると, 前者はIAAおよびサイトカイニン活性が高く, 後者はGA活性およびABA含量が高かった.一番枝花穂の小花の雌ずい中に存在する花粉管伸長阻害物質の活性は二番枝花穂のそれよりも高く, また花粉管が珠孔に達するまでの所要時間が長く, その数も少なかった.
  • 浅尾 俊樹, / 冨田 浩平, 大場 友美子, 太田 勝巳, 細木 高志, 松井 佳久, Yoshihisa Matsui
    1999 年 68 巻 4 号 p. 847-853
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    水耕キュウリの培養液から単離された生長抑制物質について検討を行った.培養液に活性炭を加え, 生長抑制物質を吸着させ, 活性炭から抑制物質を有機溶媒により溶出し, 4分画に分別した.1.キュウリに対する生長抑制は酸性のジエチルエーテル可溶性分画にみられたが, 他の分画ではみられなかった.2. 上記の活性分画のGC/MS法により検索したところ, benzoic acid, p-hydroxybenzoic acid, 2, 4-dichlorobenzoic acidおよびphthalic acidが同定された.3. 前述の種類の物質を各種濃度で培養液に添加し, キュウリ幼苗に対する生長抑制活性を調査した.その結果, 2, 4-dichlorobenzoic acidが生長を最も抑制したが, 他の物質の生長抑制活性は極めて弱かった.4. 培養液に2, 4-dichlorobenzoic acidを2 μmol・liter-1添加すると, 栄養生長には影響はみられなかったが, 果実収量は低下し, 果実の収穫期間も短くなる影響がみられた.この影響は培養液への活性炭添加により除去された.5. 以上の結果から, 2, 4-dichlorobenzoic acidは水耕栽培キュウリにおいて生長抑制効果があり, 本成分は活性炭に吸着除去できることが明らかにされた.
  • 土井 元章, 斉藤 珠美, 長井 伸夫, 今西 英雄
    1999 年 68 巻 4 号 p. 854-860
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    1. 小花の30%が開花した段階で採花したシュッコンカスミソウ'ブリストル・フェアリー'の切り花を水にいけ20∿29℃下に保持したところ, 20℃下では小花は形を保ったま老化してドライフラワー状となり, 黒花とはならなかったが, 23℃以上の温度下では急激に花弁がしおれて萎縮し, 黒花となった.2. つぼみ段階で採花した切り花に対し0.2mM STSと4%ショ糖を含む前処理液で3時間の水あげを行っただけでは, 25℃下における黒花の発生を完全に回避することはできなかった.前処理に引き続いて0.26mM 8-hydroxyquinoline sulfate (8-HQS)と4%ショ糖を含む開花用溶液にいけて糖を与え続けることにより, 小花の開花が促されるとともに, 25℃下でも黒花発生をほぼ抑えることができた.収穫から30%開花までの日数は, 20℃で5日, 25℃で3日程度を要した.また, 開花を促す際に20℃として光強度を15.0W・m-2にまで高めることにより, 切り花品質が向上し, その後水にいけた場合の品質保持期間が延長された.3. 切り花の呼吸速度は温度に対して指数関数的に増加し, 20℃での呼吸速度は約210 μmol CO2・hr-1・100 gfw-1で, Q10=1.5となった.4. 25℃下で水にいけた切り花の小花では, 20℃下でいけたものに比べて, 2日目および4日目のブドウ糖, 果糖含量が1/2∿1/3, ショ糖含量が1/4程度にまで減少していた.また, 25℃下で開花用溶液にいけた切り花では, これら3種類の糖含量が高く推移し, このことが黒花の発生を抑制しているものと考えられた.5. つぼみ切りした切り花は, 出荷段階にまで開花を促した後の品質保持期間を低下させることなく, STS処理後ショ糖溶液による湿式で4週間程度の貯蔵が可能であった.
  • 土井 元章, 宮川 昌子, 稲本 勝彦, 今西 英雄
    1999 年 68 巻 4 号 p. 861-867
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    バラRosa hybrida Hort.'ブライダルピンク'切り花を, 20℃の部屋で, 連続暗黒, 連続照明, あるいは12時間照明, 12時間暗黒を繰り返す24時間の光周期のもとで水にいけ, 切り花生体重, 蒸散速度, 吸水速度, 花弁の水ポテンシャル, 開花段階を4時間間隔で測定した.暗黒下では, 蒸散速度, 吸水速度とも1g・100gfw-1・hr-1前後を低く推移して, 3日間にわたって蒸散速度が吸水速度を上回ることはなかった.その結果, 切り花生体重は徐々に増加していった.水ポテンシャルは, -0.2MPa前後を推移したが, 7時以降の午前の時間帯にやや低下する傾向にあった.連続照明下では, 恒常条件下であったにもかかわらず, 蒸散速度, 吸水速度が増減を繰り返し, 昼間の時間帯に高くなる傾向にあった.3日目の7時以降, 蒸散速度が吸水速度を上回るようになって, それまで増加し続けていた切り花生体重が減少に転じた.花弁の水ポテンシャルは, 昼間の時間帯に低下し夜間の時間帯に回復する変動を繰り返しながら, 全体としては低下していった.開花は, 暗黒下より速く進行したが, 早朝の時間帯に開花段階が進む傾向は同じであった.フーリエ解析の結果, 連続照明下でいくつかのパラメータに24時間を周期とする周期性が検出された.明暗24時間の光周期下では, 蒸散速度, 吸水速度が明らかに光周期に同調しており, 暗期に低く, 明期に入ると上昇するという変動パターンを示した.また, この上昇のピークは3回目, 4回目の明期で最大となった.4回目以降の明期では, 蒸散速度が吸水速度を上回るようになって, 切り花生体重はこれ以降明期に低下, 暗期に上昇するという変動パターンを繰り返しながら, 徐々に減少する方向に向かっていった.花弁の水ポテンシャルは, 当初より明期で低下, 暗期で上昇する変動を示し, やがて明期開始とともに急激に低下するようになり, 暗期に回復しなくなった.第1∿2日目を除き, 花らいの開花は, 明期開始直後にのみ進行した.
  • 岡本 章秀, 野中 瑞生
    1999 年 68 巻 4 号 p. 868-876
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    クルメツツジ品種群に対するリュウキュウツツジの関与性を明らかにするための指標形質を得るため, 日本に分布するツツジ亜属ヤマツツジ節16種の葉の背軸側表皮面の形態を観察した.葉の表皮面のプレパラートはSuzuki's Universal Micro-Printing法で作成し, 観察はノマルスキー微分干渉装置を備えた光学顕微鏡を用いた.ヤマツツジ節には表皮細胞の形状, 表皮のクチクラの形態的特性, 気孔の特徴および毛状突起の有無について節内変異が存在した.これらの表皮の形態的特性に基づき供試した16種を8群に類別した.毛状突起はモチツツジとキシツツジに特異的にみられ, 指標形質として適した.気孔の数と大きさは, 種間および種群間で値の重複する部分があり, 指標形質として不適であった.本調査の結果から, 葉の背軸側表皮面の形態を観察することにより, リュウキュウツツジの原種とされるモチツツジおよびキシツツジは, 一般にクルメツツジ品種群の原種とされるヤマツツジ, ミヤマキリシマおよびサタツツジと明確に識別できた.
  • 津田 智美, 茶珍 和雄, / , 上田 悦範, Yoshinori Ueda
    1999 年 68 巻 4 号 p. 877-882
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    収穫後, 'Carabao'マンゴー果実は比重により分別した.1%食塩水に沈む果実(S)を完全に熟した果実とした.水に沈み, 1%食塩水に浮く果実(Sw)と水に浮く果実(Fw)は相対的に未熟な果実として類別した.収穫当日中にすべての果実に温湯処理(HWT, 52-55℃, 10分間)を施した.そのうちの半量に果肉中心温度が46℃に到達してから10分間の蒸熱処理(VHT)を施したものをVHT区とし, 残り半量を無処理区とした.無処理, VHT処理の果実とも25℃下で貯蔵した.1. 果皮色は無処理区においてSおよびFw果実が貯蔵4日でPCI4になったが, Sw果実においてはより早く貯蔵3日でPCI5になった.果皮色の変化にVHTは影響を及ぼさなかった.内部崩壊症(Internal Breakdown), 炭そ病および軸腐病(Stem End Rot)はすべての処理において観察されなかった.2. デンプン含量は貯蔵中, すべての果実において減少した.VHT果実のデンプン含量は処理後1日目で無処理区果実と比べて少なかった.3. 果実の糖組成はスクロースが最も多く, 貯蔵中に増加した.VHT区果実の全糖およびスクロース含量は無処理区果実よりも多かった.4. 有機酸においてはクエン酸が最も多く, 貯蔵中に減少した.貯蔵1日までのSおよびSw果実のクエン酸の減少はVHTによって影響された.貯蔵4日におけるVHT区のFw果実のクエン酸含量はVHT無処理区のそれより多かった.5. 果実の二酸化炭素排出量はVHTによって影響されなかった.
  • 東 理恵, 足立 勝, 下川 敬之
    1999 年 68 巻 4 号 p. 883-889
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.'日南1号')果実におけるエチレン誘導脱緑機構を明らかにするため, エチレン処理された果実の果皮より可溶性(水溶性)クロロフィラーゼを調製した.本研究では, その酵素について, 次のことを明らかにした.この酵素反応には1) 30℃の時, クロロフィルaからクロロフィリドaへの変換率がアセトン濃度30∿40%で最大であること, 2) 基質とタンパク質の至適濃度はそれぞれ12.4 μMと2.6 mg/4.5 mlであること, 3) 至適pHはほぼ7.6であること, 4) Km値がほぼ6.5 μMであること.可溶性粗酵素によるクロロフィル分解反応機構をさらに明らかにするため, 反応液を経時的に励起波長と蛍光波長とを同時に測定できる3次元分光蛍光スペクトル法を用いて調査・検討した.クロロフィルa分解に伴ってクロロフィルa由来の分解反応物(クロロフィル類-蛍光物質;Ex/Em : 430/670 nm)が酵素反応的に生成された.しかしながら, クロロフィル類-開環-蛍光物質(Ex/Em : 320∿360/440∿460nm)の生成は認められなかった.またin vitroでのクロロフィルa分解反応はPCMBで阻害され, その阻害は還元型グルタチオンにより回復した.以上のことからクロロフィルa分解はエチレン処理したウンシュウミカン果実より調製した可溶性クロロフィラーゼにより引き起こされることが示唆された.さらに, 本研究の結果より, 果実の果皮でのエチレン誘導脱緑において, 本酵素の関与の可能性について考察した.
  • 石丸 恵, 山本 貴司, 森岡 啓, 上田 悦範, 茶珍 和雄
    1999 年 68 巻 4 号 p. 890-896
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ハウスカキ'刀根早生'果実を用いて, 100%CO2脱渋処理後にCO2濃度を段階的に低下させる漸次低下処理がACC含量およびACC合成酵素とACC酸化酵素活性に及ぼす影響について調査した.1. ACC合成酵素活性は, カテキンの添加により著しく抑制されたが, BSAをACC合成酵素の抽出緩衝液に加えることによって, ACC合成酵素の活性を顕著に保持した.2. 未熟果実の無処理果実およびCTSD処理果実のACC含量は, 貯蔵中に急激に増加したが, CO2濃度漸次低下処理果実では貯蔵期間中常に低いレベルであった.成熟果実においても, CO2濃度漸次低下処理によってACC含量の蓄積が抑えられた.3. ACC合成酵素活性は, 未熟果実および成熟果実のCO2濃度漸次低下処理果実で, 無処理およびCTSD処理果実より低く, 未熟果実でその活性はより強く抑えられた.4. ACC酸化酵素活性は未熟果実および成熟果実においても, CO2濃度漸次低下処理によって抑制されたが, その抑制程度はACC合成酵素活性に対する抑制効果より小さかった.以上のことから, CO2濃度漸次低下処理はACC合成酵素活性を強く抑制し, 結果的にエチレン生成を抑えるものと考えられた.
  • 林田 達也, 柴戸 靖志, 浜地 勇次
    1999 年 68 巻 4 号 p. 897-899
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ツケナとその他の数種類の野菜を供試し, カルシウムの形態別含量および品種間差異を明らかにした.1. ツケナはシュンギク, レタス, ホウレンソウ, ネギに比べ, 総カルシウム含量, 水可溶性カルシウム含量および総カルシウム含量に占める水可溶性カルシウム含量の割合が高かった.2. B. napusに属する'宮内菜', '芯切菜', '京築在来', '五月菜'の中では, '京築在来'の水可溶性カルシウム含量および酢酸可溶性カルシウム含量が最も高かった.3. B. campestrisに属する'小松菜', 'はる菜', 'ビタミン菜'の中では, 'はる菜'の水可溶性カルシウム含量が最も高かった.
  • 勝川 健三, 森 源治郎, 松浦 広味, 今西 英雄
    1999 年 68 巻 4 号 p. 900-902
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Nerine 7種を用いた24通りの種間交雑組み合わせのうち, 12組み合わせで植物体を得ることができた.Nerine 3種を種子親に用い, 数種のヒガンバナ科植物を花粉親にして交雑を行ったところ, 19の交雑組み合わせのうち6組み合わせで植物体を得ることができた.
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