園芸学会雑誌
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試験管内染色体倍加による人為倍数体ブドウの作出
能塚 一徳鶴 丈和白石 美樹夫
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2000 年 69 巻 5 号 p. 543-551

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抄録
ブドウ二倍体29品種, 三倍体3系統および四倍体1品種について新梢腋芽の試験管内染色体倍加処理を行った.人為四倍体(4X)の作出では, 0.05%コルヒチンの1日あるいは2日処理が適していた.コルヒチン処理芽から伸長した新梢には異常葉が多く認められ, その一部は2X+4Xの細胞キメラであった.これらの細胞キメラは, 三個体に分株することによって完全な四倍体個体が分離できる場合があった.二倍体ブドウのコルヒチン反応性には品種間差異が認められ, また, 人為四倍体の獲得率は欧州種の方が欧米雑種よりも高かった.人為六倍体(6X)では十分な発根が認められなかったが, 3Xの根端細胞を持つ細胞キメラの発根は良好であった.人為八倍体(8X)は得られなかった.部分的に8X細胞をもつ細胞キメラの生長は弱勢であり, 極端に矮化した.人為四倍体は容易に発根し, 何年も安定であり, かつ, 樹勢が強いのに対し, 3X+6Xおよび4X+8Xの細胞キメラは圃場栽培下で消失しやすく, 元の三倍体および四倍体に戻ることが多かった.人為四倍体と二倍体間での果実品質の比較では, 成熟期, 果房形, 果粒形, 果皮色, 糖度および酸度では顕著な差異が認められなかったが, 果粒重では品種間差異が認められ, 二倍体に対する四倍体での果粒重の増加率は1.1から1.5倍まで変異し, 平均1.3倍であった.
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