園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
カキ休眠枝挿し穂の発根に及ぼす要因について
鉄村 琢哉田尾 龍太郎杉浦 明
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 70 巻 2 号 p. 163-169

詳細
抄録
カキ2品種('次郎'および'西村早生')の休眠枝挿し穂の発根に及ぼす種々の要因について調査した.地上部を切り倒した組織培養樹の根から発生したひこばえの基部を挿し穂として挿し木すると, その約4分の1が発根した.また前年のもみがらによる盛土処理により基部の黄化したひこばえを挿し穂として挿し木すると, その約半数が発根した.盛土処理したひこばえの一部は盛土中ですでに発根しており, それらは母樹から切り離した後, 底熱を与えた培土中に植え付けると容易に活着した.組織培養樹や実生台接木樹の1年生枝から得た挿し穂は発根しなかった.'次郎'と'西村早生'との挿し穂の発根率の間に有意差は認められなかった.挿し穂基部へのIBA25ppm 24時間浸漬処理やIBA3000ppm 5秒間瞬間浸漬処理は, 無処理区と比較して, 挿し穂の発根率を改善しなかった.1月末から3月末にかけての挿し木時期の違いは, 発根率に影響を及ぼさなかった.発根した挿し穂の多くは, 順調に生長し活着した.発根処理前の顕微鏡観察によって, 盛土処理したひこばえから得た挿し穂の基部には, 十分発達した周皮があるものの, 厚壁細胞はほとんどなく, 異なる分化段階の不定根原基が存在することが確認された.盛土処理しなかったひこばえやひこばえ中間部から得た挿し穂の基部に根原基は存在しなかった.前者には不連続の輪状厚壁組織が存在したが, 挿し木後ある程度発根した.一方, 後者には発達した輪状厚壁組織が存在し, 挿し木後ほとんど発根しなかった.
著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top