抄録
琉球から台湾へと連なる亜熱帯の列島弧に分布するテッポウユリ(Lilium longiflorum Thunb.)とタカサゴユリ(L. formosanum Wallace)における種間隔離の様相を明らかにした.種の分布域をほぼ完全に綱羅する自然集団を対象として生育環境と開花期, および茎葉形態の調査を行ったところ, 琉球列島の全ての集団と台湾本土および離島の3集団はテッポウユリ, 残りの台湾本土の集団はタカサゴユリと推定された.従って, 種間隔離は島嶼(とうしょ)分離によって確立されているのではなく, 生育環境への適応や開花期における比較的明瞭な分化の相加的効果によって確立されているようである.こうした進化的な潮流が種間の遺伝子流動を抑制し, 種分化を促進したと考えられる.