抄録
宮崎県では近年民有人工林において主伐が活発化し,同時に再造林放棄が多数発生している。この宮崎県を事例に素材生産の活発化と再造林放棄との関連について,聞き取り調査結果や統計資料の分析に基づき,次の3点を論じた。1)素材生産の活発化と再造林放棄,この2つを同時に生ぜしめたのは立木価格の下落である。2)素材生産の機械化は立木価格の下落とともに現在の活発な素材生産を支える要因であるが,一方で伐採跡地の荒廃を進める危険性も併せ持ち,森林所有者の再造林放棄とともに環境面での影響が懸念される。3)再造林放棄は人工林資源の縮小をもたらすため,それが同時に生じている状況は,現在の活発化した素材生産の持続性に疑問を投げかけるものである。これらのことは,戦後拡大した日本の人工林林業が本格的な主伐・更新の時期を迎え,人工林林業が持つ環境的な外部不経済の問題と資源の持続性の問題が無視しえぬものとして現れてきたことと捉えることができる。