2002 年 71 巻 2 号 p. 243-248
緑色香酸柑橘の長門ユズキチ(Citrus nagato-yuzukichi hort. ex Y. Tanaka)果実フラベド抽出物を用い, フラボノイド酸化が関与するクロロフィル分解過程について調べた.フラベド抽出物に過酸化水素を添加すると, 抽出物に存在するフラボノイドとクロロフィル分解ペルオキシダーゼによりクロロフィルの分解が促進された.クロロフィル分解中, ナリンギン, ヘスペリジンおよびネオヘスペリジンが酸化されたが, ナリンギンのみがクロロフィル分解に直接関与することを認めた.数種阻害剤を用いクロロフィル分解ペルオキシダーゼによるクロロフィル分解過程について検討したところ, ラジカル並びにスーパーオキシドアニオン消去剤により抑制が認められた.しかしながら, キサンチン-キサンチンオキシダーゼ系によるスーパーオキシドアニオン生成下でクロロフィル分解が生じないことを認め, また, スーパーオキシドジスムターゼがクロロフィル分解反応を阻害しないことがわかった.さらに, スーパーオキシドアニオン消去剤の一つであるMnCl2はフラボノイド酸化抑制作用も併せ持つことがわかった.以上の結果から, 長門ユズキチ果実フラベド抽出物のクロロフィル分解ペルオキシダーゼによるクロロフィル分解は, まずナリンギンが酸化され, 生じたナリンギンラジカルがクロロフィル分解に関与しているものと推察された.