抄録
イチゴ'女峰'果実の成熟に伴う果色およびアントシアニン濃度と組成の変化について検討した.開花41日後には, 果実の明度, 色相並びに彩度はそれぞれほぼ最小, 最大の値に達し, その後はわずかな変化しか認められなかった.しかし, 全アントシアニン濃度はその後も増加し続けたことから, 果実着色後期には内部の果肉中にアントシアニンが蓄積されると考えられた.着色初期には全アントシアニン中のcyanidin 3-glucoside (CG)の比率が高かった.しかし, pelargonidin 3-malonylglucoside (PMG)比率の変化は比較的小さかったことから, イチゴ果実におけるPMGの有無の判定に際して果実の熟度を考慮する必要性は低いと判断された.日本で栽培されている20品種についてアントシアニンの組成を分析したところ, いずれの品種でもpelargonidin 3-glucoside (PG)が全アントシアニンの66-94%と最も多く含まれていた.それらのうち11品種にはPMGが5から24%含まれていたが, 果色と全アントシアニン濃度には, PMGを生成する品種群と生成しない品種群の間に有意な差がなく, PMG生成の有無が果色に及ぼす影響は認められなかった.全アントシアニン濃度と明度, 色相の間およびCGの比率と明度の間に有意な相関が認められた.PMGを生成しない品種群内では, PGの比率と色相の間に負の, PMGを生成する品種群内では正の相関が認められた.イチゴの果色に対しては, 全アントシアニン濃度が大きく影響することが明らかになった.また, 3種類の主要なアントシアニンのバランスがイチゴの果色に影響を及ぼす可能性が示唆された.