園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
大根子葉の形状と根部形質との關係
第1報 練馬大根に就て
渡邊 誠三船串 武
著者情報
ジャーナル フリー

1938 年 9 巻 3 号 p. 287-304

詳細
抄録

1. 本試驗は大根子葉の形状と根部形質との關係に就て試驗研究を行つたものであるが其の豫備試驗として本葉15枚時の地上部の性状と根形の關係及び大根の形状及び乾燥良否關係に就て又調査研究方法を明確にせんが爲め品種間に於ける子葉の形状, 種子の大小, 子葉發育中の形状の變異等を調査し練馬大根に對し子葉鑑別目標として4型を設定し間引試驗に着手した。之等試驗の成績につき大要を述ぶれば次のやうである。
2. 本葉15枚頃の地上部の性状は立性のもの根形の發育, 形状, 肉質等優り, 特に色澤淡く小葉大なりしものは最優位にあつた。
3. 練馬大根に於ては乾燥と不可分の關係にあるが故に其の根形の良否決定に當つては不備ながらも乾燥に關する一應の調査をなし遺憾なきを期した。
4. 練馬, 美濃早生, 2年子, 新大根, 時無の5品種間に於ける子葉の形状と根形との間には相互に關係あるを認められたが尚多數の品種を取扱ひこの關係を明らかにしたいと思ふ。
5. 子葉の發育は發芽後8日目頃に於て最高に達し其の後は緩慢であるから8-10日を鑑別適期なりと判斷した。
6. 練馬大根に於ける各型の比率は種子の大小に關係無く, 坊間に販賣せらるる一般種子間に於て大略正50-60%, 丸29-30, 長6-8, 角8-9の比率を示し正最も高率に存在するを認めた。
7. 間引試驗の結果は正最も優り個數に於ても重量に於ても其整形歩合70%を超過し收量多く品質可良なりしに反し長稍可良, 丸角著しく劣れるを認めた。
8. 間引に依つて正のみを殘す時は個數に於て70%, 重量に於て78%の整形を收穫し得。自然的に行はるゝ場合は個數に於て55%, 重量に於て58%内外に減じ澤庵歩止に於ても20-30%の減少を算定し得るものにして實際の場合は漬込製品の不揃となる虞又少なからざるを豫想し得らるゝものである。
9. 以上子葉の形状と根形との間には相當密接な關係あるを知り得たるも進んで之等の遺傳關係を研究せんとし, 型別に母本を選拔し之が採種を行ひ, 播種の上調査を施行せるに正最も多く現はれ丸, 角, 長, 中にも高率に發現し來れるを認めた。而して第1代に於て分離せる子葉の各型と根形との關係並に第3, 第4代に於ける遺傳關係は繼續研究を重ね詳報したい考である。

著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top