水文・水資源学会誌
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原著論文
蒸発散サブモデルを導入した長期間流出モデルの開発
竹下 伸一高瀬 恵次
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2003 年 16 巻 1 号 p. 23-32

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抄録

本研究では, 蒸発散が流域の乾湿の影響を受けやすいことに注目し, 蒸発散サブモデルを開発して, 長期間流出モデルに導入した. まず, 愛媛県に設置された山林地及び造成畑地の2試験流域で観測された詳細な水文データを用いて流域の水文特性, とくに蒸発散について検討し, 蒸発散比が豊水時に高くなる一方で, 渇水時に著しく抑制されることを示した. そして, 流域の乾湿を表す土壌水分と蒸発散比の関係を簡単な関数で表した蒸発散サブモデルを開発し, 長期間流出モデルに導入して検討した. 同定されたパラメータは, 定性的な流域の諸特性を表していることが確かめられた. また10年間にわたる解析を行った結果, 流出現象及び蒸発散量を精度良く推定できることが示された. 本サブモデルは, パラメータが少なく, 容易にかつ連続的に蒸発散量の変化を追うことができるため, 今後土地利用変化がもたらす流出特性変化の予測などにも発展できる可能性が示された.

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© 2003 Japan Society of Hydrology & Water Resources
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