水文・水資源学会誌
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原著論文
都市の水・エネルギー利用が水域に及ぼす熱影響のモデル化と東京都区部下水道への適用
木内 豪
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2004 年 17 巻 1 号 p. 13-21

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抄録

大都市においては,都市活動に伴い大量の水とエネルギーが消費され,最終的には大気や水域へ排出されるが,熱媒体としての排水が水域へ及ぼす影響は未解明の部分が多い.そこで,本論文では,東京都区部をケーススタディに都市の水・エネルギー消費に伴い下水道を経由して公共用水域に放流される下水処理水の年平均,月平均の放流水温を定量化するモデルを構築した.本モデルを東京都区部下水道整備域に適用したところ,年平均と月平均の放流水温を精度良く推定できることが明らかとなったばかりでなく,実測データと計算結果の双方において,放流水温,放流熱量が過去30年の間,増大傾向にあることが明らかとなった.本モデルを用いた分析により,放流水温の経年的な増大要因は,上水道からの給水温度の上昇と,家庭部門・業務部門における付加熱量の増大による排水温度の上昇により説明されることがわかった.家庭部門の排水温度を上昇させている要因は台所と風呂での水・エネルギー利用の変化で,業務部門の排水温度を上昇させている要因は,建物の延床面積増大に伴う給湯によるエネルギー利用の増大であると推定された.

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© 2004 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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