水文・水資源学会誌
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17 巻, 1 号
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原著論文
  • 立本 英機, 朴 鍾錫, 町田 基, 相川 正美
    2004 年 17 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/11
    ジャーナル フリー
    異なる密度または温度を持つ流体が停滞水域に流入して起きる流れは密度流と呼ばれる.そのときに発生する底面密度流の前面速度および厚さ等の挙動特性が混合の程度に影響を及ぼす.流域内の密度流の挙動と循環および混合現象に関する流動特性を明らかにするため流入部角度を変更し,貯水池模型装置を用いて実験を行った.沈降流れは流入流体と流入密度フルード数Freの影響を受けた.流入部角度によって沈降点に有意の変化が見られなかった.密度層の厚さは時間に関係なく一定でFreのみの影響を受けることが判った.流域内の密度変化及び下流端で反射後の密度流は流域の長さ,時間,浮力流れ率の関数であると考えられる.
  • 木内 豪
    2004 年 17 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/11
    ジャーナル フリー
    大都市においては,都市活動に伴い大量の水とエネルギーが消費され,最終的には大気や水域へ排出されるが,熱媒体としての排水が水域へ及ぼす影響は未解明の部分が多い.そこで,本論文では,東京都区部をケーススタディに都市の水・エネルギー消費に伴い下水道を経由して公共用水域に放流される下水処理水の年平均,月平均の放流水温を定量化するモデルを構築した.本モデルを東京都区部下水道整備域に適用したところ,年平均と月平均の放流水温を精度良く推定できることが明らかとなったばかりでなく,実測データと計算結果の双方において,放流水温,放流熱量が過去30年の間,増大傾向にあることが明らかとなった.本モデルを用いた分析により,放流水温の経年的な増大要因は,上水道からの給水温度の上昇と,家庭部門・業務部門における付加熱量の増大による排水温度の上昇により説明されることがわかった.家庭部門の排水温度を上昇させている要因は台所と風呂での水・エネルギー利用の変化で,業務部門の排水温度を上昇させている要因は,建物の延床面積増大に伴う給湯によるエネルギー利用の増大であると推定された.
  • 松井 宏之, 石田 朋靖
    2004 年 17 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/11
    ジャーナル フリー
    1986年から2001年までの16年間の観測結果をもとに,日照率から全天日射量を推定するAngstrom式の変数,係数のトレンドについて検討し,以下のような知見を得た.(1)全天日射量は全国的に有意な増加トレンドにあり,混濁係数の低下に表れるエアロゾルの減少が寄与している可能性が示唆された.(2)一方の変数である日照率では一様なトレンドは認められない.(3)Angstrom式の係数も多くの気象官署で変動トレンドが認められる.(4)Angstrom式の同定は,長期間の全天日射量,日照率を対象とするのではなく,必要に応じて期間を限定し行うことが望ましい.
  • メプルクサウォング パタポーン, 市川 勉, 荒牧 昭二郎, 山田 正
    2004 年 17 巻 1 号 p. 32-42
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/11
    ジャーナル フリー
    東南アジア,熱帯モンスーン地域には多くの洪水地帯があり,さらに,多くの水田のために大量のかんがい用水が利用されている.多くの水田にはかんがい水路が無く,そのため,農民は地下水の利用で水の不足を補っている.しかし,それらの地域では地下水位,雨,洪水や河川のモニタリングシステムはほとんど無い.これら洪水を伴う低地帯における水理地質や地下水挙動を調べるために,雨量計,河川水位計,22地点の地下水観測井戸を設置し,22のボーリング調査で地質状況を調査した.著者らはこれらのデータをもとに,水文や地下水の状況を解析した.その結果,調査地域には地表付近に2つの主な帯水層があり,第一帯水層は地表面の状況によって大きな影響を受けていることがわかった.さらにYom川と直接接している地下水の水位は川の水位と同じ挙動を示し,そして,商業的な砂採取場の存在が地下水位に大きな影響を与えていることがわかった.
  • 石田 祐宣, 松島 大, 樋口 篤志, 檜山 哲哉, 戸田 求, 浅沼 順, 玉川 一郎, 宮崎 真, 田中 賢治, 杉田 倫明, 永井 秀 ...
    2004 年 17 巻 1 号 p. 43-60
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/11
    ジャーナル フリー
    計測機種の違いによる乱流フラックスの誤差を評価するため,植生活動が活発で潜熱輸送量が大きい2001年5月14日~6月1日に筑波大学陸域環境研究センター(TERC)の観測圃場(草地)において乱流計測機の相互比較観測を行った.まず,赤外線カメラによって測定された地表面温度分布を測定し,加えてfootprint解析を行い,3m離れた2点の超音波風速温度計による顕熱フラックスとそれらのfootprintの地表面温度との対応関係を風向別に調べた.その結果,第1近似として両者の有意な相関は見られなかったので,風上地表面が一様である前提で乱流変動量の標準偏差と共分散(フラックス)を用いて比較を行った.
    超音波風速温度計(DA-600, GILL-R3, ATI-SATI)に関しては全ての計測機間で出力特性が良く一致した.一方,水蒸気/CO2変動計については,特にLI-7500やOP2のデータが安定しており,湿度温度計などに対して平均値同士の簡便な再校正を施せば誤差を減らすことができた.計測機の違いによるフラックスの過小評価は見られなかったが,ダイナミックキャリブレーションを行う上で,校正を行う帯域において相関係数が低い場合,フラックスの過小評価を招く可能性が高いことが示唆された.
研究ノート
  • 秋山 知宏, 藤田 耕史, 中尾 正義, 安部 豊, 辻村 真貴
    2004 年 17 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/05/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,中国西北地方の乾燥域である黒河流域と,隣接する石羊河流域を対象とし水質形成過程を検討した.その結果,両流域ともに,沙漠域の地下水は山麓域のそれと比較して高塩分濃度であった.乾燥域では通常,流下に伴い蒸発作用により溶存成分の濃度が上昇することが一般的であるが,黒河流域では山麓域からオアシス域にかけて低濃度の地下水の流出によって希釈され,地下水の河川流量に対する寄与率は,オアシス域では80%程度にも達することが示唆された.石羊河の主流は山麓域でその全てが堰き止められているため,沙漠域に到達する河川水の大部分はオアシス域の支流から流れてきた水が占める.そのため,沙漠域における河川水の水質組成は支流と同じであった.
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