水文・水資源学会誌
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原著論文
水資源計画における社会的コンフリクトのマネジメントに関する研究
—インド・バングラデシュのガンジス河利用に関するコンフリクトを対象として—
坂本 麻衣子萩原 良巳
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2005 年 18 巻 1 号 p. 11-21

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抄録

世界で発生する水資源をとりまくコンフリクトのひとつとして,バングラデシュとインドのガンジス河の水利用に関するコンフリクトがある.ガンジス河の水利用はバングラデシュの上流に位置しているインドに有利な内容になっている.こうした背景の下,2国間のみでの交渉が続けられ,コンフリクトの状況は停滞している.このように当事者間でコンフリクトの状態が硬直した場合,コンフリクトの解決へ向けて,第三者機関の介入が重要となると考えられる.
本研究では,利害の異なるプレーヤー間の均衡状態について分析するゲーム理論を基礎として構築されたコンフリクト解析を用い,この枠組みで第三者機関の役割について分類と定義を行う.まず,第三者機関を利得関数を持たない主体‘Complement’として定義する.さらに,その役割を‘Donor’,‘Coordinator’,‘Arbiter’の3タイプに分類する.
以上の‘Complement’のコンセプトを元に,バングラデシュとインドのコンフリクトについて分析を行う.まず,現状をコンフリクト解析を用いて記述し,次に,現状の記述から現在のコンフリクトの状況を改善するために必要な条件を分析する.そして,この条件を実現するような第三者機関の役割について考察する.さらに,第三者機関の役割として定義した中から,特に‘Coordinator’に着目し,‘Coordinator’がコンフリクトの状況を改善するために必要な条件を明確にする.

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© 2005 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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