水文・水資源学会誌
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原著論文
降雨流出モデルの開発と適用 
-貯留水路法の提案-
カオ ドン グエン荒木 宏之山西 博幸古賀 憲一
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2005 年 18 巻 3 号 p. 257-273

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抄録
本研究は,貯留水路法に基づいた新しい概念の降雨流出モデルの開発について報告したものである. 流れの方程式を陰的に解くことにより,実測データとの比較を行い,ベトナム中央部の低平地流域に適用し,本モデルの有効性を明らかにした. さらに,日本において従来からよく用いられている菅原のタンクモデルによる計算結果との比較により本モデルの適用性を確かめた. 計算結果の精度に関する統計値および本モデルから得られるハイドログラフの両方から,適切な流出制御装置を統合した本モデルが満足できる高い精度で流出量を評価できることを明らかにした. 本モデルは12のパラメーターを持っており,感度解析から各パラメーターが流出ハイドログラフのピークと形状の双方に及ぼす影響(感度)を示した. 従来のタンクモデルでは流出係数が固定されているため,時間的に変動する境界条件を考慮することが不可能であったが,本モデルでは水路流出口に設定された流出制御装置(施設)により,それが可能となるという革新的な利点が得られる. このように流出制御施設という新しい概念を導入することと非定常の降雨プロセスを考慮することにより,低平地等における潮汐の影響を再現することが出来ると共にハイドログラフの形状,ピーク,時間という重要な要素を高精度に評価可能であることも大きな利点である. このように,本モデルは従来型のモデルに比べて優位性を有すると共に降雨流出と山地から低平地までの流域内の流れを解析することが基本的に可能である.
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© 2005 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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