2005 年 18 巻 3 号 p. 310-320
気象庁陸面モデル(Simple Biosphere)に,ヨーロッパ中期予報センターによる15年再解析データをもとに作成した大気強制力を与えて算定したモデル陸域貯水量を,大気-陸域結合水収支から得られた陸域貯水量を用いて検証した. 検証に当たっては,Taylorダイアグラム上で月平均気候値の季節変化を比較した. 陸域貯水量に関する両者の定義が異なることを考慮すれば,本研究で得られた結果は良く一致していると言える. とりわけ,位相差を考慮すると,多くの流域で相関係数は0.9を越えている. この位相差は,モデルに含まれていない地下水,湖沼,河道による貯留効果が主要因であると考えられる. Taylorダイアグラムでこれらの結果を表示したことにより,ラグ相関の最大値が同時相関に比べて良くなるか,またその位相がどの程度異なるかを視覚的に容易に把握することができ,更に各流域の問題点を俯瞰することもできるようになった.