中国内蒙古自治区の黄河流域に建設された実験トウモロコシ圃場において, 本地域の灌漑水節約の可能性をみるために, 灌漑実験を行った.根域を厚さ40 cmの第1層と厚さ60 cmの第2層に分割し, 必要灌漑水深Wa(mm)は次式のように表されものとした.
Wa=(max[W1FC-W1, 0]+max[W2FC-W2, 0]) (1+α)
ここでWi は第i 層内に含まれる水分量(mm) (i = 1, 2), Wi FCは同層の「動的圃場容水量」(mm),α は塩度管理あるいは水分一様分布のための根域濾過部分を表す.動的圃場容水量Wi FCは各層底における水分要素に作用する力が釣り合う際のWi の値と定義され, 2層BBHモデルを用いて評価される.この臨界点は静的ではなく動的な性質を有し, 地下水深と植物根による吸水能に依存する.
実験圃場で2004年に通常通りに行われた灌漑から,α の圃場での平均値は0.75と評価された.灌漑直後地下水位が根域内まで上昇し, その下部域は長期にわたってほとんど飽和していたことから, この値は最適値よりも大きく, 過剰灌漑が行われたことは明白である.