抄録
山地源流域斜面に位置する天然落葉広葉樹(ミズナラ;Quercus crispula Blume)林の単木蒸散量(q )の季節変化と日スケール以上の林分蒸散量(TR )を評価するために,Granier(1985)原理の樹液流速測定を複数の供試木で行った.q は展葉完了後まもなく最大値を持ち,夏季から秋季にかけては飽差とともに減少傾向を示した.樹液流速測定法によるTR は,短期水収支法で求めた蒸発散量から同一斜面における先行研究を用いて推定した遮断蒸発量と林床面蒸発量を差し引いて求めた蒸散量とほぼ一致し,本研究で行ったTR の評価は短期水収支法との比較において概ね良好であると考えられる.