水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
19 巻 , 1 号
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原著論文
  • 飯田 真一, 中谷 壮, 田中 正
    2006 年 19 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/04/27
    ジャーナル フリー
    山地源流域斜面に位置する天然落葉広葉樹(ミズナラ;Quercus crispula Blume)林の単木蒸散量(q )の季節変化と日スケール以上の林分蒸散量(TR )を評価するために,Granier(1985)原理の樹液流速測定を複数の供試木で行った.q は展葉完了後まもなく最大値を持ち,夏季から秋季にかけては飽差とともに減少傾向を示した.樹液流速測定法によるTR は,短期水収支法で求めた蒸発散量から同一斜面における先行研究を用いて推定した遮断蒸発量と林床面蒸発量を差し引いて求めた蒸散量とほぼ一致し,本研究で行ったTR の評価は短期水収支法との比較において概ね良好であると考えられる.
  • 辻村 真貴, 恩田 裕一, 原田 大路
    2006 年 19 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/04/27
    ジャーナル フリー
    密植により林床が裸地化したヒノキ林流域において,降雨流出時に発生する地表流の流出特性および形成機構を明らかにすることを目的に,恒常水流のないヒノキ林小流域を対象とし,水文観測およびトレーサー解析を行なった.総降雨量120.4mm,最大降雨強度3.8mm/5minの降雨イベントにおいて,総流出量15.7mmの地表流が観測された.地表流の流出ピークは降雨ピークとほぼ同時に発生し,流出の応答がきわめて速い特性が示された.降雨ピーク時における地表流の電気伝導度およびCl-濃度はきわめて低い値を示し,降雨イベント成分が地表流に大きく寄与していることが示唆された.電気伝導度およびCl-をトレーサーに用い,土壌水成分,地下水(パイプ流出水)成分,降水成分を3つのEnd memberとし,地表流の成分分離を行った.その結果,地表流に占める降雨イベント成分の割合は,24%から82%と推定され,とくに降雨強度が2mm/5minを越える場合のそれは59%以上と,顕著に高い値を示した.以上の結果から,本研究において観測された地表流は,とくに降雨強度が高い条件下においては,降雨強度が浸透能を超過することにより生ずるホートン地表流によって形成されていることが示唆された.本邦における山林の状況を考慮すると,このような現象はより普遍的に発生している可能性があり,今後より詳細な検討が必要である.
  • 野原 大督, 小尻 利治
    2006 年 19 巻 1 号 p. 25-43
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/04/27
    ジャーナル フリー
    近年,世界各地において,洪水災害や異常渇水などに代表される様々な河川災害が多発している.また一方で,地球規模での気候システムに何らかの変化が生じていると言われているが,そういった地球規模での変化が,貯水池管理に代表されるような地域的な水資源管理に及ぼす影響については,いまだ十分に議論されていない.こうした状況下において,効率的な貯水池管理を実現するためには,それぞれの流域に関係すると期待される,より多くの情報の利用を検討する必要がある.また,近年の各貯水池での水文学的状況の観測結果に応じ,各貯水池における操作ルールを変化させる過程を導入することも,変わり行く気候システムの中で安定した水資源管理を行うには効果的な手法であると考えられる.
    そこで,本研究では,地球規模気象情報を考慮した連続貯水池操作支援システムを提案し,予測精度の向上を試みる.そしてさらに,操作結果と得られた水文情報の観測結果から操作ルールを自律的に変化させる過程を考慮した,学習型連続貯水池操作支援システムを提案し,より効果的な水資源管理手法の確立を図る.
  • Ashraf M. DEWAN, Kwabena KANKAM-YEBOAH, 西垣 誠
    2006 年 19 巻 1 号 p. 44-54
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/04/27
    ジャーナル フリー
    洪水災害マネジメントにおいて詳細な洪水区域図は必須条件である.冠水し易い区域の特定に基づいて詳細な洪水災害の情報を得る手法を用いれば,損失を引き起こす洪水を最小限に抑えることができる.
    本研究では,レーダーリモートセンシング(ラダルサット)のデータを利用してこれを評価し,バングラデシュ国のダッカ市で1998年に発生した洪水に伴う浸水区域の分布を高い精度で抽出した.適切な洪水対策を講じるために有用と考えられる最大浸水区域を正確に特定するために,洪水期間の7画像と乾期の1画像を使用した.レーダー画像をデジタル処理してピクセルデータに変換し,微小ノイズを除去するためにフィルタリング処理を施した.最大尤度判定規則を用いて画像を浸水区域と非浸水区域に区分した.レーダーデータの区分の精度は,地表データを参照して評価した.洪水の多時点解析によると,浸水区域は1998年7月(浸水率34.65%)から増加し始め,主にモンスーン性の豪雨と河川水位の早い時期の上昇により8月25日にピークを迎えた(浸水率51.29%)ことが明らかとなった.市内東部では深刻な洪水被害が発生した一方で,西部では相対的に標高が高く洪水制御設備も完成していたことから被害はなかった.画像の区分の精度からは,本研究で用いたデータ画像は十分な結果を得られたことは明らかである.最も高い精度だったのは7月31日の画像で88.57%に達し,つづいて7月7日(82.86%),9月10日(81.90%)の順となった.また,すべての画像に対して算出したKappa係数は,8月の画像をのぞいて良い一致を得た.この結果,SARデータは,ダッカ市などの急成長している都市での実時間洪水モニタリングにおいて極めて重要であり,洪水災害の情報とマネジメントのために重要な情報を与えることが可能であることが明らかとなった.
研究ノート
  • 篠宮 佳樹, 山田 毅, 吉永 秀一郎, 鳥居 厚志
    2006 年 19 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/04/27
    ジャーナル フリー
    四万十川流域の森林から流出するNO3-N負荷量を評価するため,高知県梼原町のモミ・ツガ天然林流域において,渓流水の流量及び水質を同時連続観測し,降雨流出時におけるNO3-N濃度の変動について検討した.調査は総雨量35~289mmの5つの降雨イベントで行った.降雨イベント前後のNO3-N濃度変化は降雨規模により異なった.総雨量100mmまででは,降雨イベント後のNO3-N濃度は降雨前と概ね同じ濃度に戻った.総雨量150mm以上では,降雨イベント後のNO3-N濃度は降雨前の濃度より大きく低下した.NO3-N洪水流出負荷量は降雨量とともに増加傾向を示したが,総雨量が150mm以上の大雨になると増加率が低下する可能性が示された.
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