抄録
かつて「越すに越されぬ大井川」とうたわれながら,戦後の発電ダム建設等により流量の大半を奪われ,下流の一部で「河原砂漠」と化している大井川の流量変化の実態を明らかにするため,1923年から2000年までの流況の長期変動について調べた.その結果,塩郷堰堤建設前の長期平均流況は平水51.0トン,低水29.4トン,渇水16.4トンであったが,建設後の堰堤流入量の長期平均流況は平水10.7トン,低水5.2トン,渇水2.6トンに変化していた.仮に近い将来,大井川の水量を回復するために塩郷堰堤を撤去したとしても,それだけでは下流の大井川に昭和30年代の水量を取り戻すことはできず,水量を取り戻したければ,上流ダム群を含めた総合的な流量再生策を検討する必要があることが示された.