水文・水資源学会誌
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原著論文
印象による水辺の多基準評価システムを用いたコンフリクトマネジメント
坂本 麻衣子萩原 清子佐藤 亮
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2012 年 25 巻 5 号 p. 290-305

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抄録

 公共事業評価において一般的に用いられる費用便益分析では,便益の測定は大きな問題として挙げられている.河川整備においても,環境要素を含む水辺整備事業の価値を貨幣価値に変換して評価しなければならないという困難さがある.また,近年,河川整備事業において,行政と流域生活者や,流域生活者の間でのコンフリクトの発生が頻繁に見受けられることから,生活者の意見を反映する一方で,コンフリクトの発生をできるだけ回避するコンフリクトマネジメントの視座を考慮した生活者参加型の計画評価方法の整備が必要であると考えられる.これに対して,本研究では,まず,生活者の河川に対する印象を用いて,生活者視点での水辺環境の評価システムを多基準分析のフレームで定式化する.次に,コンフリクトの発生要因となりうる生活者の価値観のばらつきを評価するために,TRC指標を定義する.そして,以上の一般化された一連のフレームを京都鴨川の上・下流域の2地域での生活者へのアンケート調査結果に適用し,最終的には,多基準分析を用いて,人々の水辺の利用を増やし,コンフリクトの発生可能性の少ない水辺整備指針の優先順位を分析し,提示する.

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© 2012 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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