水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
25 巻 , 5 号
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原著論文
  • 佐藤 香枝, 上野 健一, 南光 一樹, 清水 悟
    2012 年 25 巻 5 号 p. 271-289
    発行日: 2012/09/05
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル フリー
     中部山岳域の標高1,300 mに位置する筑波大学菅平高原実験センターにて,33年間蓄積された日単位の降水形態記録から冬季の降雨発生傾向を明らかにし,簡易光学式雨滴計を利用した集中観測データと数値モデルを用いて,降雨が発生した12事例における降水形態の変化過程と大気場の関係を解析した.厳冬季(12-2月)における降雨日の発現率は12 %で,その7割が移動性低気圧に伴ってもたらされていた.冬季(11-4月)の低気圧による降雪日数に長期増加傾向が見られた.厳冬季の降雨日数には長期増加傾向は見られなかったが,年々変動が大きく太平洋十年規模振動の指標と有意な相関があった.極端に降雨日が多い年は暖冬で冬季の積算降水量は少なく,降雨の発生により山岳積雪構造が顕著に変化する可能性がある.3冬季間で降雨が継続または混在した12降水事例を抽出した結果,降雨のみが発現した事例では広域の暖気場が本州上空に卓越し,低気圧経路は様々であった.一方,降雪と降雨が混在した事例は発達する南岸低気圧か寒冷前線の通過を伴い,ほとんどの事例で降水形態は雨から雪へ変化した.菅平では,降雪に移行する前に南風成分が弱化し,0 ℃付近の等温期間が発生した.風速の弱化は,低気圧の移動に伴い風系が東西成分に変化し越後山脈の障壁効果が生じることが原因であることが数値モデルにより確認された.降雨のみの事例では総観場が広域の暖気移流を支配するため数値モデルも降水形態を再現できたが,降雨から降雪への形態変化に関しては再現が不十分であった.その要因に関して低気圧の移動に伴う南北に走る谷間に沿った気団の交代と東西風卓越時に山脈風下で想定されるフェーン発生に伴う昇温の観点から考察した.
  • 坂本 麻衣子, 萩原 清子, 佐藤 亮
    2012 年 25 巻 5 号 p. 290-305
    発行日: 2012/09/05
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル フリー
     公共事業評価において一般的に用いられる費用便益分析では,便益の測定は大きな問題として挙げられている.河川整備においても,環境要素を含む水辺整備事業の価値を貨幣価値に変換して評価しなければならないという困難さがある.また,近年,河川整備事業において,行政と流域生活者や,流域生活者の間でのコンフリクトの発生が頻繁に見受けられることから,生活者の意見を反映する一方で,コンフリクトの発生をできるだけ回避するコンフリクトマネジメントの視座を考慮した生活者参加型の計画評価方法の整備が必要であると考えられる.これに対して,本研究では,まず,生活者の河川に対する印象を用いて,生活者視点での水辺環境の評価システムを多基準分析のフレームで定式化する.次に,コンフリクトの発生要因となりうる生活者の価値観のばらつきを評価するために,TRC指標を定義する.そして,以上の一般化された一連のフレームを京都鴨川の上・下流域の2地域での生活者へのアンケート調査結果に適用し,最終的には,多基準分析を用いて,人々の水辺の利用を増やし,コンフリクトの発生可能性の少ない水辺整備指針の優先順位を分析し,提示する.
  • 申 文浩, 佐藤 政良, キン テ チョル, 石井 敦
    2012 年 25 巻 5 号 p. 306-314
    発行日: 2012/09/05
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル フリー
     水管理の効率性・持続性向上のため,発展途上国では参加型水管理(PIM)が進められている.一方,工業化が進展した東アジアの国では用水の公的管理強化の動きがある.特に韓国では1980年代から公的補助管理が行われ,2000年に農民水利組織を廃止し,農業基盤公社(現,韓国農漁村公社,KRC)を発足させ,それまでの水利費徴収を停止するとともに水利施設を全面的に管理することとなった.本研究は,かつてない全面的な公的管理という韓国の制度の下で,用水の末端部でどのような水管理上の問題が生じているのかを実際の農業用水地区をとりあげ,農民とKRCの現地における行動を調査するとともに農民に対するアンケート調査を行い,分析した.その結果,末端水路における農民とKRCの責任分担に関する関係者の合意が形成されていないことから,1KRCが末端水路内部の水配分調整には関与できない,2)末端水路の維持が十分に行われていない,3)これらの問題の解決に農民は、KRCへ期待するだけで、自ら行動する意欲は極めて乏しい,ことなどを明らかにした.
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