水文・水資源学会誌
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原著論文
通信用アンテナの電波の乱れの特異性強度の 分析によるリアルタイム降雨検知
水谷 司猪又 憲治辻田 亘本田 利器藤野 陽三長山 智則
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2014 年 27 巻 5 号 p. 208-218

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抄録

 本論文では,日本国内に広く設置されている通信用アンテナである漏洩同軸ケーブル(LCX)の電波の乱れを信号処理することで降雨をリアルタイムに検知することを試みた.降雨による通信用アンテナの電波の乱れの大きさは極めて小さく雑音に埋もれるため,直接その乱れから降雨の有無を判断することはできない.そこで,アンテナ表面に水滴が付着することで生じる信号の不連続的な変化の特性を“特異性強度”という数学的な指標により信号各点で評価し,その変化から降雨を検知することを試みた.屋外で計測した降雨時の信号の乱れの特異性強度をウェーブレット変換を応用して信号各点で推定して,その1分間ごとの平均値と1分間降雨強度とを比較した結果,無降雨時と降雨時との間に特異性強度の差がみられた.ボックスプロット法により統計的に特異性強度の時間変化を分析した結果,無降雨時の特異性強度の分布に対して降雨時の特異性強度には有意な変化があることがわかった.この結果から通信用アンテナであるLCXの電波の乱れの特異性強度の変化をみることでリアルタイムに降雨を検知できる可能性があることを示した.

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© 2014 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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