本稿では,東南アジアの洪水常襲地帯における住民の災害対応と支援の関係を社会的経済的背景を踏まえて分析した.アンケート調査をタイとミャンマーの研究対象地で実施した.共通点は,非貧困層と比べて貧困層は強度の低い家に住み,浸水深と浸水期間がより深刻である.両地域で異なるのは避難率と災害準備率,支援受領率である.ミャンマーではインフラの未整備,強度の低い家屋,蓄えが乏しい家計,支援物資の配布方法が貧困層の避難率を高くしている.タイはミャンマーより支援受領率が高く内容も多様で,貧困層と非貧困層の間で受領率の差がないが,ミャンマーでは支援対象は貧困層であるため非貧困層の受領率が低い.結論として,中所得国のタイでは,ある程度インフラが整い,行政による早期警報,緊急支援が機能するが,世帯の経済状況に依存する項目(家屋,災害準備,復旧)に格差が見られ,貧困層の経済状況の改善が地域の災害回復力強化に有効である.低開発国のミャンマーでは,蔓延する貧困とともに,インフラ未整備,行政能力の不足,防災知識の欠如が,災害対応力を低くしている.状況の改善のためには貧困対策だけではなく,能力開発などを含めたより多面的なアプローチが必要である.
2011年東北地方太平洋沖地震津波により,東北地方太平洋沿岸部では大きな人的被害や物的被害が発生した.河川を遡上する津波は海域の津波とは異なり,複雑な挙動を示す.国土技術政策総合研究所にて行われた北上川を模擬した模型実験により入力津波の規模や地形や河川流の有無といった条件を変化させたケースで水位の時系列データを得た.河道内に流れを絞った状態で,浅水流の仮定を用いた計算モデルとの比較を行いその精度検証と特性把握を行った.計算結果は水位のRMSEが約1 mという実用的な再現性であったが,河口部での海岸堤防による反射波や回折波の影響のある地点,高水敷などの水深の浅い地点での誤差が大きいという結果が得られた.また,河口砂州等の地形によって河道内にて3-4 mの水位減少が認められ計算においても同様の結果が得られた.河川流を含む条件での計算結果は約3 mの過大評価となっており,本モデルでの再現性は比較的低いものとなった.
本号より,本学会誌「発想のたまご」の編集委員が新しくなりました.担当の4名とも「若手のページ」の編集担当から引続き担当させて頂きます.次の2年で何をなすのか?各々が簡単ではありますが,所信表明をさせて頂きます.