水文・水資源学会誌
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原著論文
分布型流出モデルと時空間起源追跡法による鬼怒川洪水の流出解析
佐山 敬洋田中 茂信寶 馨
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2015 年 30 巻 3 号 p. 161-172

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抄録

 平成27年9月関東・東北豪雨によって,鬼怒川上流域では総雨量が約500 mmに達し,常総市周辺で堤防決壊や溢水による洪水被害が発生した.上流の湯西川ダム流域では,9月9日13時までに140 mmの前期降雨が降った後,強度19.5 mm/h(標準偏差:3.5 mm/h,最小~最大:14.0~27.7 mm/h)の降雨が10時間にわたって継続した.また,その期間の後半(9月9日18時~23時)には,ダム地点の流量が平均11.0 mm/h(標準偏差:0.5 mm/h,最小~最大:10.5~11.6 mm/h)で6時間継続した.本研究は,観測された鬼怒川洪水の流出特性を明らかにすることを目的に,山体地下水を考慮する分布型流出モデルを用いて流出解析を行った.また同定したモデルで出水時の流出経路や時空間起源を推定した.分析の結果,今回の洪水を再現するうえで,土壌から基岩への浸透など主要な流出経路からの損失を考慮する必要があることが分かった.また流出量が概ね一定に達した期間も,流域遠方に降った雨の流出成分は増加しており,流出の成分は時間的に変化している可能性が示唆された.

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© 2015 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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