水文・水資源学会誌
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30 巻, 3 号
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巻頭言
原著論文
  • -メコン川における水力発電施設開発を対象に-
    齋藤 自快, 川崎 昭如
    2017 年 30 巻 3 号 p. 149-160
    発行日: 2017/05/05
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー

     経済成長と人口増加のため多くのアジア諸国では水資源の確保と供給は大きな課題であり,豊富な水資源を有するメコン川の開発には大きな関心がもたれてきた.本研究では,メコン川最大の支流域で,カンボジア・ラオス・ベトナムをまたぐ3S支流域での,水力発電施設の国家間の提携的開発のための意思決定を支援するツールを開発した.本ツールはRobust Decision Makingの概念を応用し,数値シミュレーションに用いるデータの不確実性を考慮しつつ,提携時の便益を定量的に算定できる. 単独開発・2カ国間提携・3カ国提携の提携シナリオにおいて,電力取替原価・環境コスト・開発予算の入力変数について5,011,875通り中4,504,231通りの値の組み合わせで3カ国提携が最大の便益を生み出すことが判明し,3カ国提携のロバスト性が示された.一方,予算が特定の条件を満たすときはカンボジアとベトナムの提携が最大の便益を生み出し,この予算の条件が完全には満たされない場合でも,ラオスが予算を部分的に共有することで便益を最大化できることが判明し,新たな3カ国の提携の可能性を示した.

  • 佐山 敬洋, 田中 茂信, 寶 馨
    2015 年 30 巻 3 号 p. 161-172
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー

     平成27年9月関東・東北豪雨によって,鬼怒川上流域では総雨量が約500 mmに達し,常総市周辺で堤防決壊や溢水による洪水被害が発生した.上流の湯西川ダム流域では,9月9日13時までに140 mmの前期降雨が降った後,強度19.5 mm/h(標準偏差:3.5 mm/h,最小~最大:14.0~27.7 mm/h)の降雨が10時間にわたって継続した.また,その期間の後半(9月9日18時~23時)には,ダム地点の流量が平均11.0 mm/h(標準偏差:0.5 mm/h,最小~最大:10.5~11.6 mm/h)で6時間継続した.本研究は,観測された鬼怒川洪水の流出特性を明らかにすることを目的に,山体地下水を考慮する分布型流出モデルを用いて流出解析を行った.また同定したモデルで出水時の流出経路や時空間起源を推定した.分析の結果,今回の洪水を再現するうえで,土壌から基岩への浸透など主要な流出経路からの損失を考慮する必要があることが分かった.また流出量が概ね一定に達した期間も,流域遠方に降った雨の流出成分は増加しており,流出の成分は時間的に変化している可能性が示唆された.

  • 田中 健二, 瀬川 学, 藤原 洋一, 高瀬 恵次, 丸山 利輔, 長野 峻介
    2017 年 30 巻 3 号 p. 173-180
    発行日: 2017/05/05
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー

     2014年10月に手取川上流で発生した大規模な土砂崩壊によって,平均で585度(カオリン),最大で4,012度(カ オリン)という高濃度の濁水が2015年灌漑期に観測された.この高濃度濁水が手取川扇状地内の地下水循環に影響を及ぼすことが懸念されているが,影響の実態は不明なままである.そこで,本研究では,高濃度濁水が手取川扇状地内の水田浸透量に与える影響について明らかにすることを試みた.濁水発生前の2014年,濁水発生後の2016年を対象として,45地区の水田で減水深調査を行い,水田浸透量の変化を分析した.その結果,2014年の水田浸透量の平均値は12.4 mm/dayであるのに対して,2016年は7.9 mm/dayであり,水田浸透量が有意に減少していることが明らかとなった.また,水田浸透量が減少した地区は,扇端部に多くみられ,これは粒径の細かい土砂が扇端部に多く供給されたためと考えられた.水田浸透量の観測結果に基づいて扇状地全体の地下水涵養量の変化を概算すると,水田からの涵養量(浸透量)は濁水発生前より36 %減少し,扇状地全体の地下水涵養量が濁水発生前より25 %減少したことが示された.

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