水文・水資源学会誌
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原著論文
黒部川扇状地における自噴井の湧水量と水質の特徴
松浦 拓哉手計 太一北 隆平溝口 俊明
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2017 年 30 巻 6 号 p. 373-385

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抄録

 地下水を適切にマネジメントできる状態にするためには,平時から地下水環境の長期間かつ定期的なモニタリングは極めて重要である.本稿では,2011年4月から2016年3月までの5年間,黒部川扇状地の地下水環境の中長期的変化と季節変化を明らかにするために実施してきた20か所の自噴井の定期的な水量と水質の観測結果と解析結果を報告する.

 それらの結果,いずれの自噴井においても地下水のpH,電気伝導率は5年間を通してほぼ一定であった.一方,水温と自噴量については季節変化が認められた.また,扇端部の自噴井の溶存イオン量は,黒部川から離れるにつれて増加していた.さらに,扇端部の深層井戸や扇頂部の自噴井は,溶存イオン量の特徴が大きく異なっていた.

 黒部川扇状地における適切な地下水環境マネジメントのためには,平時から今後も調査を継続していく必要がある.しかし,本研究の結果から,水質項目によっては毎月でなくても2~3ヶ月に一度程度の調査でも年間の変化を捉えることが可能であり,調査観測の省力化は図れる.限られた条件の中でも,観測項目,観測頻度,観測箇所の選択と集中を図ることが可能となり,効率的な地下水マネジメントに資する観測が可能となる.

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© 2017 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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