水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
総説
森林土壌の流出緩和効果に関する研究の展開過程
谷 誠
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 31 巻 2 号 p. 107-121

詳細
抄録

 森林土壌の流出緩和効果について,浸透能,保水容量に基づく通説を紹介した後,山腹斜面の流出機構に関する理解にともなって進展してきた評価手法を解説した.土壌の効果はその間隙分布からもたらされる保水・透水特性に基づくのであるが,具体的には,降雨を吸収して洪水流出総量を減らす効果と降雨波形を緩やかにして流出ピークを低くする効果として現れる.後者の効果は,パイプ状水みちや土層下側の風化基岩層の中の流出機構によって影響を受けるが,生物によって大間隙が形成され,土層発達にともなってパイプ状水みちが形成される長期過程を考慮すると,結果的に森林土壌の洪水流出緩和効果が発揮されたとみなすことができる.

著者関連情報
© 2018 Japan Society of Hydrology and Water Resources
前の記事 次の記事
feedback
Top