地球の平均気温は過去130年程度の間に約1 ℃上昇したが(IPCC, 2007),作物の農事暦も変化していることが予想される.本研究の目的は,中国華北平原における主要農産物である冬小麦の農事暦変化及び作付面積の変化を定量化し,その変化要因を気候変動や利水政策等を含めた総合的な側面から明らかにすることである.本研究では2時期の衛星データを組み合わせて得られた1982年から2012年の植生指数(NDVI)データを解析に利用した.その結果明らかとなった冬小麦の春季の起生期(生育開始時期)の早期化は3月の平均気温上昇と対応し,秋季の播種期の遅れは9-10月の約2度の気温の上昇と10月初旬の降水量増加に対応していた.また,冬小麦の作付面積の変化は水不足に対応した地下水への課金や,農業税の廃止等の政策とも関連していると考えられた.