水文・水資源学会誌
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原著論文
気候変動が淀川水系の渇水リスクに及ぼす影響
伊藤 昌資菅野 豊大八木 豊西澤 諒亮川瀬 宏明佐々井 崇博杉本 志織川﨑 将生中北 英一
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2020 年 33 巻 3 号 p. 83-97

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抄録

 本研究は,高度に水資源開発された淀川水系を対象に,気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)により,アンサンブル気候予測データ(d4PDFの4 ℃上昇実験)を5 kmメッシュに力学的ダウンスケーリングしたデータを用いて,気候変動が渇水リスクに及ぼす影響を評価した.バイアス補正は,多数のアンサンブルデータに適したクオンタイルマッピング法を適用し,移動窓を設定した上で移動平均を行う方法を採用した.淀川水系の渇水リスク評価のためには,日本最大の淡水湖・琵琶湖,ダムなど水資源開発施設の貯留効果を評価する必要があることから,積雪・融雪,蒸発散等の水循環過程を反映した分布型流出モデルによる流出計算を行い,利水計算を行った.なお利水計算は,琵琶湖及び各ダムによる全開発水量が利用される前提で計算している.琵琶湖水位を渇水リスクの評価指標とした確率評価の結果,全球で定常的に4 ℃上昇した将来の利水安全度は,現況で1/10に対し,将来予測では1/2未満へ低下する結果となった.また,1/100渇水年の水位は,バイアス補正無で-3.04~-3.74 m,補正有で-4.46 ~-5.92 mまでの低下が予測された.

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© 2020 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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