水文・水資源学会誌
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技術・調査報告
森林の伐採などが最大・最小日流出量(無雪期)に及ぼす影響-釜淵と竜ノ口山の両森林理水試験地の事例から-
玉井 幸治
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2021 年 34 巻 4 号 p. 243-253

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抄録

 竜ノ口山森林理水試験地南谷流域,釜淵森林理水試験地2号沢流域と3号沢流域における森林衰退による最大・最小日流出量(無雪期)の変化を対照流域法により解析した.3号沢流域では樹木伐採による影響のない期間に比べて,影響のある期間での最大日流出量は平均で約8 mm day-1 程度大きかった.この値は,最大日流出量をもたらす降雨イベントでの雨量が多い場合でも少ない場合でも同程度であると考えられた.南谷流域での山火事やマツ枯れによる事例でも同様であった.最大日流出量の増加は主に,森林樹木が無くなったことによると考えられた.2号沢流域でも伐採による影響のない期間に比べて,影響のある期間での最大日流出量は増加する傾向が認められたが,最大日流出量をもたらす降雨イベントでの雨量が多いほど増加量が多くなると考えられた.2号沢流域では,伐採後に斜面崩壊により流域面積の約2割で裸地化していた.森林樹木が無くなったことによる影響の他に,森林土壌の流亡による影響も加わったことによると考えられた.

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© 2021 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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