水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
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水田域の持つ遊水地機能の超過洪水に対するソフト対策としての活用法
沢田 明彦後藤 慎一増本 隆夫
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ジャーナル オープンアクセス 早期公開

論文ID: 37.1813

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抄録

 用排水路等の農業水利施設を含めた水田域の持つ潜在的な遊水地機能とその利活用方法を検討するため,マクロな水田域の貯留能力を定量化するとともに,その機能を用いた農村地域が流域治水に果たす役割を論じた.そこでは,流域の排水能力の整備水準を上回る超過洪水時に生じる水田域での氾濫水の貯留が,都市域の治水に貢献してきた実態を遊水地機能の効果として評価し,その機能を治水に利活用することを超過洪水に対する「ソフト対策」として定義した.次に,低平都市化水田域の西蒲原地区を対象に,排水(通水)能力Dと水田貯留能力Sの関係を定式化し,超過洪水に対する氾濫水を貯留するための水田貯留能力を定量化することで,水田域の持つ遊水地機能を評価する一連の手法を提示し,さらにソフト対策を案出した.加えてソフト対策は,遊水地の新たな整備や排水(通水)能力の増強整備といったハード対策より迅速な対応であることを論じた.最後に,水田域がポテンシャルとして持つ遊水地機能を,農業者側と都市側の協働による補償制度創設を前提に,非常時には流域管理・流域治水の一環として利活用することを,超過洪水対策の選択肢の一つとして提案した.

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