水文・水資源学会誌
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リモートセンシングデータを用いた分布型広域補完法の提案
気温推定法を応用した補完法による広域実蒸発散量の算定
金子 大二郎日野 幹雄
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1997 年 10 巻 4 号 p. 337-348

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抄録
Brutsaert(1979,1982)によって大気安定度を考慮に入れた補完法が最初に示唆されている.この考え方を用い,Parlange and Katul (1992)はBrutsaert (1982)が示唆した補完法により,圃場で気象条件を観測して実際に潜熱フラックスを推定している.一方,著者ら(1993)はKatul and Parlange (1992a, 1992b)とは独立に,リモートセンシングデータを用いモーニン・オブコフ相似則を適用して潜熱・顕熱フラックスを広域的に推定して来た.本論文では,リモートセンシングデータを用いた気温推定法(金子,1994)をこの補完法に取り入れることにより,実蒸発散量の平面分布を推定可能な分布型広域補完法を提案した.推定法の概要は次の通りである.Landsat TMから得られる地表面温度と気象台ルーチンデータを用い,まず大気境界層の接地層気温の平面分布を広域的に推定する.次に,補完法を構成するPenman蒸発位の式中の空気乾燥力項に,上述の気温の推定値を用いた.本論文で提案された方法により,流域スケールまたは圃場スケールの平均された実蒸発散量を得ていた従来の推定法は,広域的な分布型の補完法に拡張される.推定された実蒸発散量は,葉温飽差―相似則法(金子・日野,1994; Kaneko and Hino, 1996)の結果とほぼ一致し,両方法による推定結果の妥当性が相互に検証された.
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