1998 年 11 巻 3 号 p. 201-209
本研究は線形化モデルによる地表面熱フラックスの集約化を研究するために,領域平均地表面フラックス算定式と集約化規範の導出を行ない,不均一な領域における地表面熱フラックスの集約化について検討を行なった.2部構成の第I部である本論文では,線形化モデルから領域平均地表面フラックス算定式と集約化規範を導出し,理論的な検討を加えたところ,以下の知見が得られた.(i)導出されたモーメント法による算定式はパラメータ平均法によって算定されるフラックスに,地表面パラメータの分散並びにクロスモーメント項を加えたものである.(ii)1つのパラメータだけが分布している場合のパラメータ平均法並びにモーメント法の集約化規範はパラメーター分布のモーメントに対する許容範囲として表せる.(iii)顕熱と潜熱に対する集約化規範を比較すると,バルク係数だけ,或は蒸発効率だけが分布している場合,通常,両方とも潜熱に対する規範の方が厳しい.(iv)複数のパラメータが分布している場合のモーメント法による領域平均フラックスの算定式を導き,顕熱,潜熱に対する集約化規範を導いた.(v)一般化された集約化規範は,クラスター分析の考え方と一致し,集約化にはクラスター分析の手法を用いることができる.