水文・水資源学会誌
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暖候性湿潤気候帯の山地流域におけるSVATモデルの適用
馬 燮銚福嶌 義宏橋本 哲檜山 哲哉中島 皇
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1999 年 12 巻 4 号 p. 285-294

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抄録

由良川源流域に設置された上谷流域(4.9km2)は暖候性積雪地域で,天然生のスギ,ミズナラ,ブナなどに覆われている.本試験流域において,1993年6月から1994年12月にかけて流出量と基本気象要素を取得した.両年の夏季は対照的で,1993年は多雨で冷夏,1994年は少雨で猛暑であった. この流域の蒸発散量と融雪量を適確に推定するために,簡単なSVATモデルを適用した,本モデルを実行する際,群落抵抗のパラメータを必要とするので,これまでに提案されている三つの群落抵抗の推定式を導入した.これらの式中で重要なパラメータである最小群落抵抗値を同定するため,貯留型流出モデルをSVATモデルとリンクさせ,流域の水収支をチェックしながら最も適切な最小群落抵抗値を同定した.その結果,両年を通して,観測値とほぼ一致するハイドログラフが得られた.また,最小群落抵抗値は同一流域であっても,乾燥年と湿潤年で大きく変わってくることが判明したが,放射乾燥度を導入すると統一的に説明可能であった.すなわち,最小群落抵抗値が平均的な流域土壌水分条件の関数であることが示唆された.

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