水文・水資源学会誌
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降雨継続時間と降雨強度が降雨量の地形性増加に与える影響
タイ国Mae Chaem流域における事例
大楽 浩司蔵治 光一郎鈴木 雅一ニポン タンタムワリン シラスタウィーグンコーウィット パンジャトロン
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2000 年 13 巻 1 号 p. 57-68

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抄録

GAME-T (GEWEX Asian Monsoon Experiment-Tropics)研究の一環として,タイ国チャオプラヤ川流域上流の山岳地帯であるMae Chaem流域において地上雨量計による降水観測を行っている.この山岳地帯において,流域規模の水収支,流出解析で入力となる降水の時間分布,空間分布の特性が,地形とどのように関係しているのかを明らかにしようとした. 13個の雨量計を3,853km2のMae Chaem流域の標高約380mから2,500mのところに設置した.解析に使用したデータは,1998年6月から1998年11月までの時間分解能1秒の細かいデータである.その期間の雨量は,標高に対して強い線形増加性を示した.降雨の地形性増加を解析するための手法を検討し, 2つの定義をして降雨継続時間と平均降雨強度を算出し,それらが降雨の地形性増加へ与える影響について検討を行った.一雨を定義する中断時間,平均化時間の値の取り方によって,降雨の地形性増加に関係してくる要因が変わることが示された.降雨継続時間を算出する手法に依らず,降雨量の大小は降雨継続時間に比例しており,降雨強度はほとんど関係していないことがわかった.結論として,この山岳地帯において雨期の降雨量は,降雨継続時間の増大に伴って増加するが,平均降雨強度とは独立な関係にあった.

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