2002 年 15 巻 4 号 p. 362-370
溶質流出モデルの構築に向けて,山地森林流域における溶質の長期流出特性を評価するために,徳島県白川谷森林試験流域で得た水文水質観測資料に著者らの研究グループが開発した森林水循環モデルを適用した.その結果,微生物や植生などの生物学的影響が渓流水質に季節変化を与えるような長期の溶質流出過程においても,短期洪水イベントと同様に各種雨水流出成分の構成比が渓流水質に最も大きな影響を与えており,雨水の流出過程を的確に表現するモデルを基礎として溶質の流出過程をモデル化する必要性が示された.さらに土壌水質の変化を検討した結果,溶質の鉛直浸透と側方流出のメカニズムは異なっており,数理モデル化において考慮に入れるべきことが示唆された.