水文・水資源学会誌
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竜の口山森林理水試験地の渓流水質
金子 真司服部 重昭後藤 義明玉井 幸治
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2002 年 15 巻 5 号 p. 472-485

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抄録

瀬戸内地域に位置する竜の口山森林理水試験地(E130°58′,N34°42′,以後竜の口山試験地と呼ぶ)の渓流水質の特徴と生成過程を明らかにするために,北谷流域と南谷流域で渓流水の調査を行った.2流域とも渓流水中の溶存成分濃度は我が国の他の渓流に比べて全般的に高かった.流出量の増加に伴いCa2+,Mg2+,Na+,HCO3-およびCl-濃度は大きく低下し,降雨イベント時にNO3-,全窒素および溶存有機炭素(DOC)濃度の上昇ピークが出現した.溶存成分の渓流水の溶存成分濃度が高い原因として,塩基含量の高い岩石の存在している可能性があることや,少雨のために蒸発散による溶存成分の濃縮率が高いことが考えられた.また竜の口山試験地は直接流出率が高く貯留水量が少ないことから,無降雨時には蒸発散によって高濃度の渓流水が形成され,降雨時には多量の直接流で多くの溶存成分濃度が急激に低下するが,NO3-やT-NおよびDOCは土壌表層からの洗脱によって濃度上昇が起きること考えられた.北谷流域ではCa2+,Mg2+,HCO3-,Cl-,SO2-4が高く,南谷流域ではpHとNa+,NO-3,SiO2濃度が高かった.地質や斜面傾斜の違いが2流域の濃度の違いに影響しているのではないかと推定した.

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