水文・水資源学会誌
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日本の農業用水の価格と市場形成に関する歴史的考察
丹治 肇
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2002 年 15 巻 5 号 p. 522-532

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抄録

本論は日本の農業用水の価格について, 歴史的なトレンド分析を元に市場形成の可能性を検討した. さらに, 問題点の分析と展望を述べた. まず, トレンドとして, 市場経済の進展(≒グローバリゼーション)と環境重視(≒ローカリゼーション)の2つを想定した. 次に, 検討対象を末端水利用と水利権(≒施設規模)にした. これらのトレンドを過去の農業水利事業に当てはめると, 前者重視の時代と双方重視の時代に分けられた. 末端水利用においては, DSM(需要調整)が次第に市場経済化による金銭支払いに置き換わってきた. しかし, 市場経済化のトレンドにもかかわらず, 施設構造上の問題から, 末端農業用水へは価格導入がなされなかった. 今後は, DSMへの市場メカニズムの組み込みが拡大するだろう. 水利権の取引は, 公水主義にもかかわらず, 代替事業で実現されてきた. 環境重視のトレンドは, 拡大しており, 今後は, 環境用水の拡大とともに, 水利権制度の見直しが必要になろう. さらに, 欧米と同様に, 日本でも, PPP(汚染者負担原則)などの水関連制度への組み込みが重要になろう.

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