水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
棒状温度計による地表面温度観測の誤差
三枝 信子山崎 剛加藤 内蔵進
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 6 巻 2 号 p. 12-16

詳細
抄録

中国気象局で観測している地表面温度の誤差範囲を評価する目的で,ガラス製棒状温度計による裸地面温度観測の誤差について検討した.棒状温度計を半分土に埋めた場合(中国での観測方法)と,土の上に置くだけの場合を想定し,熱電対で測った地表面温度と棒状温度計の示度を比較した.その結果,棒状温度計の下半分を土に埋めた場合には,温度計示度は土の表面温度とほぼ等しいことがわかった.ただし,地表面温度が特に高温になると,棒状温度計の示度は地表面温度よりやや低温を示す傾向がある.次に,温度計を土の上に置くだけの場合には,温度計示度は地表面温度よりも一般に低く,7~8℃低温になることもあった.これは,放射によって温度計が加熱される効果より大気との熱交換のために冷却される効果の方が大きいためであることが,温度計の熱収支の考察により示された.また,気温・放射等の気象条件が得られれば,真の地表面温度に補正し得ることも示された.以上のことから,棒状温度計による地表面温度データは,観測方法に注意して用いれば,蒸発散量の評価などの定量的な解析に使用できる.

著者関連情報
© 水文・水資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top