水文・水資源学会誌
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チャオプラヤ流域の水資源危機とその対策
新谷 渡竹内 邦良シヴァ ヴァンチャイ
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1994 年 7 巻 6 号 p. 520-528

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抄録

タイ王国のChao Phraya川流域にはBhumibl(総貯水量135[億m3]),Sirikit(95[億m3])という非常に大規模な貯水池がある.この貯水池は,以前は発電を,現在はその下流にあるChao Phraya川流域の耕作地帯への潅漑用水供給を主な目的として放流操作されている.近年の両貯水池の貯水量は低下の一途をたどり,90年代は死水域寸前の状況にあり,大きな問題となっている.この原因については,近年貯水池への流入量が減ってきていることや,耕作面積の大きさに伴う潅漑用水の供給量等が挙げられる.その対策として現在タイ王国で提案されているいくつかの計画,ならびに我々が考案したルールについて紹介する.このルールはこれから農作物を作付けるにあたり,貯水池の残存貯水量を確認して,必要ならば潅漑耕作面積を制限するものであり,貯水池が涸渇・溢水する危険率をパラメータとして表わしてある.このルールから近年の潅漑耕作面積はかなり危険率の高い状況であったことが浮き彫りとなった.

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