抄録
北海道北部の雨竜川源頭部の新第三紀火山地帯において,融雪出水時に厚い積雪下の川の水温が徐々に上昇し,3~4℃に達することが判明した.この水温は融雪水の温度0℃よりかなり高く,川も積雪によって外界の熱源から遮断されている.従って融雪期の3~4℃の流出水は,その大部分が地中で暖められて川に出てきたものと考えざるを得ない. 8,9月の降雨による出水時の川水温は,融雪出水時とは対称的にピーク流出後下降し,9~11℃に漸近する.融雪期及び暖候期のそれぞれの出水時に漸近する川水温は,いずれもその時期のこの地域の約1.8m深の地温に相当している.ハイドログラフと水温の変動をつきあわせた結果,1.8m深地温相当の水温をもつ地中流出成分に,融雪水または降雨の水温をもつ浅層流出成分が,一時的に混入したものがこの流域の洪水流出であると仮定して,ハイドログラフの2成分分離を行った.その結果地中流出成分は8~9割を占めた.また川水温の場合を参考にして,川水の比電導度によるハイドログラフの分離も行った.