水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
チベット高原タングラ山脈北面の永久凍土地帯における夏期蒸発散
瀧澤 英紀窪田 順平小池 俊雄大畑 哲夫
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 9 巻 2 号 p. 119-127_1

詳細
抄録

チベット高原タングラ山脈北面の植生が小さな群落で生育する永久凍土地帯において,大気―地表面相互作用を理解するための基礎として,各種地表面状態におけるアルベドおよび小型ライシメータによる蒸発散量の測定を行った.小型ライシメータの地表状態は,水,裸地,自然状態の植物群落,飽和土壌の植物群落,土壌面を密閉した植物群落の5種類である.蒸発散量および気象要素の測定から各ライシメータの蒸発効率βの経時変化を求め,その特性を比較した. 永久凍土地帯の夏期のアルベドは,植物群落,乾燥裸地,湿潤裸地それぞれのアルベドにそれぞれの面積率を掛けたものの和として表される.土壌面を密閉して土壌面蒸発を抑制した植物群落ライシメータのβは地表面(葉)と大気の水蒸気圧差の増大につれて減少した.土壌密閉の植物群落ライシメータと飽和土壌の植物群落を比較し,葉面付着水分の蒸発と土壌面蒸発を含む蒸散を分離した.各蒸発面におけるβは,葉面付着水分ではβ=1~0.75,飽和土壌蒸発を含む蒸散の最大値はβ=0.75であり,そのうち飽和土壌面蒸発はβ=0.18であることを解明した.

著者関連情報
© 水文・水資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top