本研究は,通常開水路や管路流れにおいて乱流にともなう溶質の混合に対して用いられる混合距離理論を,飽和多孔体内の分散現象への適用について議論するものである.この理論では,分散係数は混合距離と間隙実流速の標準偏差との積で表される.これまでの実験から,飽和状態と不飽和状態では,分散機構が異なるのがわかっている.それは,流速が,飽和状態では水理勾配によって変わるのに対し,不飽和状態では媒体内の水分飽和度によって変わるからである. 一様な粒径のガラスビーズを媒体とした飽和流れでの濃度変化を測定する実験から,分散係数を表現するモデルの検証と粒径毎の混合距離特性の把握を行った.モデルのパラメータとしての実流速の変動係数は,水分特性曲線と不飽和透水係数~水分飽和度の曲線の二つから求めた. その結果,混合距離はいずれの粒径に対してもその1.8倍となった.これにより,分散係数は媒体の透水特性,水分特性,粒径及び平均実流速から求められた理論値と実験値によく一致することが確かめられた.