抄録
ダムの最適利水運用については,過去に数多くの研究がなされてきた.しかし,現場で使いやすい数学的モデルがないことのほかに,長期間の将来流況が予測できないこと,運用を評価する指標が不明であることなどのため,実際のダム管理の現場において最適運用の実用化は行われていない.ところが,古典的理論であるマスカーブや確保容量に確率の概念を導入し,常識的に考えられる範囲の評価関数を仮定して比較すると評価関数による差は意外と小さく,将来流況や評価関数が不明でも高レベルのダム運用が可能となる.このことは世界的にも現在に至るまで内容が明らかにされていないため,本論文において解説するものである.なお,ここにおける最適利水運用は都市用水や農業用水を意味し,発電は別の理論による.